目次
あらすじ
16世紀スペイン。キリスト教徒のマリアとイスラム教徒のエルナンド。
恋するふたりを悲惨な戦争が引き裂く。
宗教と民族。運命と歴史。
事実を基にした歴史小説。
読書感想文(2000字、原稿用紙5枚)
小説の舞台となっている「グラナダ」はスペインの南の街です。
海辺、というには少し遠い気もしますが、ジブラルタル海峡は地図上だと近く、また、アフリカ大陸にわりと近いロケーションです。
中世にイスラム王朝が存在していたため、アルハンブラ宮殿というイスラム建築の世界遺産があります。
宮殿内はスペインの太陽をふんだんに取り入れた豪華な雰囲気になっており、その見事さに、周りの国々はグラナダ王国への侵略をあきらめたという説もあります。
グラナダ王国は1492年、「レコンキスタ」によって滅びてしまいます。
レコンキスタは「再征服運動」と訳されています。ヨーロッパからイスラム教徒を追い出してしまおうという運動でした。今も昔も宗教によって人間関係がうまくいかないのは同じです。
レコンキスタによって、スペインが位置するイベリア半島からイスラムの国は亡くなりました。
『太陽と月の大地』はその後のスペインを題材にしています。
<「見ろよ、ハクセル、海だ。アフリカの海、そしてグラナダの海だ」>
レコンキスタ後のスペインは、キリスト教徒もイスラム教徒もお互いを尊重しながら暮らしていました。
ですが突如、キリスト教の王様がイスラム教徒の弾圧を始めます。
隣人として、友として、仲良く暮らしていたはずの人々が、突然敵と味方に分かれる。
私は戦争を経験したことはないのですが、いきなりそのような状況に置かれたとしたら、頭がとても混乱することだけは想像がつきます。
スポーツの試合を見るとき、私たちは主にユニフォームの色で両チームの区別をしますが、宗教による対立では、どのように判断するのがいいのでしょうか。
サッカーの試合では、終了後、ユニフォームを交換するなどして親睦を深めています。
強いクラブチームなんかはいろいろな国のメンバーを集めており、たとえばスペインのリーグ戦だったとしても、スペイン人のみのチームというのはほとんどありえず、だからこそ、ユニフォームを交換してしまったら、選手についてあまり詳しくない私は、誰がどのチームの所属だかわからなくなってしまいます。
『太陽と月の大地』は、本に「人物相関図」が付いており、人間関係やその人についてわからなかったら見ればいいのですが、これがもし現実だったらそう簡単にはいきません。
ほんとうであれば皆が仲良くするのが理想的ですが、現実はそうではありません。
私たちは自分に害を及ぼす人であるとか、自分が傷つけてしまう可能性がある人と関わるときにはいっそうの注意を払わなければなりません。
夜道を歩いているときには、自分に近づいてくる人はたいていあやしいですが、昼間はそのセンサーの感度レベルは下がります。
当たり前のことですが、四六時中いつでも警戒して生きていたら、神経がもちません。
生きている限り危険が訪れる可能性はゼロではありませんし、いつかは死ななければなりませんが、いつでもそのことを考えて生きるのは、あまり経済的であるといえないと思います。
もしかしたら、人間はそんなことをできるだけ考えずに生きていけるように宗教を発明したのかもしれません。
神を信じられる人は、たぶん人間を信じることもできます。
初詣の報道を見るたび日本人って神様が好きだなと思うのですが、日本が平和なのは案外そういうところに一因があるのかも。
そういえばグラナダはガンダムでは月にもあります。
終戦協定が結ばれるような場所で平和の象徴のときもありますし、反乱軍の拠点になり攻撃の対象になったりもしています。
『太陽と月の大地』を読みスペインのグラナダの歴史を知ったおかげで、ガンダムのグラナダのポジションをあらためて考え直す機会になりました。
読書というか読書感想文のいいところは、知識で知識の再発見ができることだな、と感じました。
太陽光は太陽だけではなく、太陽光の反射すなわち月光からも感じることができるのと似ているかもしれません。
(1630字、原稿用紙4枚と14行)
おわりに
『太陽と月の大地』を含む「2018年読書感想文課題図書のまとめ」はこちら
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