目次
あらすじ
日本海の離島。そこで発見された日本最古の田んぼ。
そこで発見された「条里田」の痕跡。
秘境でなぜ国家規模のプロジェクトが行われていたのか?
時空を超えるノンフィクション! 君は、刻の涙を見る。
読書感想文(2000字、原稿用紙5枚)
炊き立てのご飯はおいしい。
私はあきたこまちを食べて育ったのですが、最近はコシヒカリを食べることが多いです。
正直にいうと、お米の味の違いはわかりません。ですが、炊きたてのご飯がおいしいことだけはわかります。
人生において最も幸せを感じる瞬間として、炊飯釜のフタを開ける瞬間というのが挙げられます。
ご飯が炊けると私なんかはすぐに混ぜたくなってしまうのですが、その理由は、フタを開けた瞬間の炊きたての香りを世界で一番最初に味わうことができるからだと思います。
ときどき、「あなたにとってご飯に最強に合うおかずは?」という質問をみかけます。
この質問は、「あなたの血液型は何ですか?」みたいな質問なんかより、よっぽどその人の人となりがわかる質問だと私は思っています。
梅干だったり、海苔であったり、塩だったり、味噌汁だったり、鶏の唐揚げだったり、カレーだったり、はたまた、チャーハンだったり。
あるいは何もいらない白いご飯だけあればいい、なんて人も一定数います。
私はねぎと豆腐とアブラアゲのお味噌汁が食べたいです。ひきわり納豆もあればベスト。
白いご飯は日本人の食にとって重要な位置を占めており、言いすぎかもしれませんが、それについてだけで誰かと1時間以上話すことができる貴重な話題だと思います。
本書『千年の田んぼ』は、白いご飯と日本人の関係のルーツを探ることのできるノンフィクションです。
『千年の田んぼ』で語られているのは山口県萩市の見島というところです。
グーグル検索したところによると、コシヒカリを栽培しているようです。
コシヒカリというと新潟県のような豪雪地帯で作るイメージがあったので、山口県のような日本列島の南の方(サンゴ礁や熱帯魚も観察できるそう)で出荷されているのを知り、意外に思いました。火山による地層のおかげで、土がいいそうです。
お米作りには「水」が重要なポジションにあると記載がありました。野球でいうと守備のセンターラインでしょうか。キャッチャー、ピッチャー、ショート、セカンド、センターあたりがしっかりしていると守り全体が引き締まるように感じます。
人間は体内の7割から6割くらいが水分だといわれ、食物や飲み物から得られる水はとても大切です。
私は四六時中水を飲んでいますが、田んぼも四六時中水を飲んでいる状態なんじゃないかと思います。
「水田」というように、北日本ではおよそゴールデンウィーク前後に田んぼに水が張られていきます。
その水鏡の景色を私はとても好きで、一面そんな光景が広がっているような場所にたまたま出会ったりするだけで幸せな気持ちになります。
まっすぐな線で区切られた田んぼが規則的に配列された風景は、今では当たり前ですが、『千年の田んぼ』によると、1300年前には当たり前ではなかったそうです。まるまるころころとした小さな田んぼばかりだったと書いてあります。
私は丸いもの―たとえばダルマさんとか茶筒とかアイフォンのホームボタンとか―も好きなので、一度実際に見てみたいと思いました。
研究者の視点で進むので、読み始める前はなんだかむずかしそうな、小難しい本なのかもしれないと思いましたが、わからないことと、それへの取り組み・アプローチ・推理・検証・行動などを通して、答えというか仮説を導き出し、さらに次の行動につながっていくことがわかりやすく書かれていて、もちろん内容もすごいと思ったのですけれど、文章の書き方についても感心しました。
人によっては違うというかもしれませんが、私は推理もの(例えば『名探偵コナン』や『シャーロックホームズ』)を読んでいるかのような、そんな印象を受けました(コナンには『絶海の探偵』という映画があり見島は山口県の絶海の孤島です。関係ないか)。
推理ものは現在の状況を注意深く観察して過去のできごとを推理します。
田んぼや古墳を観察して1300年前の政治や稲作を推理することと、現場や関係者の証言を総合して事件を推理することは、本質的には一緒のような気がします。
私はつねづねコナン君のような人間になりたいと思っているので、『千年の田んぼ』を読み、研究者の推理を勉強しつつ、「あなたにとってご飯に最強に合うおかずは?」と道ゆく方々に質問をし実戦力を高めていきたいと思います。
(1775字、原稿用紙4枚と19行)
おわりに
石井里津子『千年の田んぼ』を含む「2018年読書感想文課題図書のまとめ」はこちら
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