目次
あらすじ
絶滅した淡水魚・クニマス。
「最後のクニマス漁師」になってしまった男は絶望する。
絶望の中、希望を求めて彼はもがく。
絶望を焚べよ。
これは、自らの使命に命をかけた「いのち」の物語。
読書感想文(2000字、原稿用紙5枚)
なくなったはずのものが実はありました!なんてことがわかると、とても嬉しくなります。
食べられてしまった……と思っていたプリンが実は3個パックだったので2個も残っていたとか。
メガネメガネ!と探していたら実は頭の上にあったりとか。
壮絶な最期で行方不明になっていたキャラクターがパワーアップした姿でピンチに駆けつけてくれるとか。
私はクニマスがいた田沢湖を訪れたことがあります。
田沢湖はかつてはクニマスがうじゃうじゃいたようで、お殿様への献上品として選択されていたようです。
魚は私も大好きで、クニマスは食べたことがないのですが、イワナやヤマメの塩焼きは毎年食べています。
田沢湖は日本一深い湖です。
ウィキペディアによると、湖の深さは400メートルくらいあるそうです。400メートルは走ってもオリンピック選手が40秒くらいかかる距離です。私だったら1分はかかる。湖底がとても深いことを想像するだけでお腹のあたりがぞわっとします。
田沢湖には「辰子姫伝説」というものがあり、実際に辰子姫の像(金ぴか!)が建っています(とてもフォトジェニックな撮影スポット)。
辰子姫はどうして伝説になったかというと、自分の欲の深さゆえにというか、欲望があまりに大きすぎたために報いを受けたような形、で伝説になったようです。
美しく生まれてしまった辰子は、自分の美しさがどうか永遠に続きますようにと思いはじめます。
彼女は熱心に神様に願いごとします。神様はうんざりしたのか、辰子に「水をがぶ飲みするように」と伝えます。
すなおだったのでしょう。彼女はそれが自分にどのような効果を与えるのか、よく考えないまま、わからないまま、お告げのとおりひたすら水を飲み続けます。
私だったら500ミリリットルペットボトルのペプシコーラを飲みきることすら難しいと思いますが(やったことはありません)、彼女はなんと、飲んでも飲んでもお腹がいっぱいになるどころか、かえって喉が渇いていきます。自分の美しさを永遠のものとするために無心だったのでしょう。
やがて彼女は竜へと姿を変えます。
(はめられた!)と思ったのでしょうが、美しいままでいたいというみにくい願いを持ってしまった結果なのだな、と悟った彼女は竜の姿のまま田沢湖に身を潜めることにしました。
というわけで、田沢湖は400メートルもの深い湖なのですが、湖底にドラゴンが住んでいる可能性があります。ちょっとワクワクします。
しかも、ドラゴンは彼女だけではなくて、もう1匹いると言う噂です。辰子姫の彼氏である「八郎」も、同じ秋田県にある八郎潟から引っ越して、田沢湖で同棲しているという話です。田沢湖は彼らカップルの愛の巣ともいえます。
ちなみに辰子が人間から竜に姿を変えて行方不明になったのち、彼女は母親と田沢湖にて再会しています。
そのときたぶん夜だったからか、母親はたいまつを持っていたらしく、湖に投げ入れて、そしてそれが魚の姿に変わったというのがクニマスの源だという言い伝えです。
オリンピックでも「聖火リレー」というものがあるように、たいまつの火を伝え続ける事は人類にとって原初より続く大切な儀式であると思います。
クニマスが絶滅したと言うことは、秋田県で古より伝えられてきたたいまつの灯が途絶えたことを示しています。
クニマスが絶滅するとかしないとか、それが自分に直接に関係があるとかないとか、そのような自分のための損得計算でクニマスの生き死にを考えるのではなくて、昔から続いてきたものがなくなることは、たぶん人類の歴史にとってプラスではない、『クニマスは生きていた!』を読んで私はそう思いました。
クニマスが絶滅していた場合と、クニマスが生きていた場合では、直接的には私の生活に影響はないかもしれませんが、クニマスが生きていたことによって救われる誰かがいるのは事実です。
もしいつの日かまたクニマスを食べられる日が来るとしたら、秋田県のお殿様になった気分で味わってみようと思いました。
(1657字、原稿用紙4枚と16行)
おわりに
池田まき子『クニマスは生きていた!』を含む「2018年読書感想文課題図書のまとめ」はこちら
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