森見登美彦おすすめ小説文庫ランキングTOP10

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小説家・森見登美彦とは?

 1979年奈良県生まれ。
 京都大学農学部卒、同大学院農学研究科修士課程修了。
 2003年日本ファンタジーノベル大賞を『太陽の塔』で受賞。
 『夜は短し歩けよ乙女』は2007年に山本周五郎賞を受賞。

 

KKc
若者を中心に絶大な支持を受ける人気作家。
 森見氏の作品の特徴はなんといってもそのユーモアかつ大言壮語な文体だ。
 大きなことを言っていながらその中身はへなちょこだったりする。
 そんなところに彼の小説の魅力が隠されている。

 

 きっと一度でも読んだのならば、森見氏の作品の魅力に取り付かれることになるだろう。
 そんなわけで今回は、森見登美彦の小説で文庫で手に入るものについてランキングをつけてみた。
 もう読んだ方も未読の方も、参考にしていただけると大変嬉しい。

 

第10位『きつねのはなし』


「短夜の狐たばしる畷かな」
(新潮文庫,106頁)

 「妙なケモノ」を持つ屋敷の主人は、どこか得体の知れない人だった――。
 狐の面、龍の根付、徳利、生臭さ、濡れたケモノ……
 古都の深い闇を描く、森見登美彦のホラー短編作品集。

 

第9位『四畳半王国見聞録』


「ついに証明した! 俺にはやはり恋人がいた!」
(新潮文庫,150頁)

 運命の女性を数式で導き、現実に出現させようとする数学氏。
 マンドリンの辻説法師・丹波氏。
 身近にあるものをへこませる能力を持つ凹(へこみ)氏。
 桃色映像からモザイクを取り出すことのできるモザイク先輩。
 驚くほど存在感のない無明君。
 日傘を差した水玉ブリーフの男。
 「凡人を目指す非凡人の集い」――大日本凡人會の真の活躍は、ここから始まる。

 

第8位『宵山万華鏡』


「ともかく、これが宵山というものだよ。藤田君」
「嘘つけ」
(集英社文庫,83頁)

 「祭りというものは神秘的で、あの異世界に迷い込んだような感覚は私を惹きつける」と作者・森見氏は語る。
 京都・祇園祭の宵山が舞台の連作短編集。
 祭りの一日を舞台として、不思議な出来事が交錯する。まさに「万華鏡」と呼ぶべき森見ファンタジーの真骨頂がここにはある。

 

第7位『新釈 走れメロス 他四篇』


芽野史郎は激怒した。
必ずかの邪知暴虐の長官を凹ませねばならぬと決意した。
(祥伝社文庫,107頁)

 国語の教科書でもおなじみ『走れメロス』をはじめ『山月記』、『藪の中』、『桜の森の満開の下』、『百物語』などを森見氏がリメイクした詰め合わせが本書だ。
 メロスは逃げるために走るし、藪の中で人は死なない。
 森見登美彦氏が敬意を込めて、かつ愉快に楽しめるように再構築した短編集。ぜひ読んでほしい。

<関連リンク>

藪の中にあるラブレター|芥川龍之介『藪の中』【感想文】あらすじ付

自分は特別だと信じる人は虎になる|中島敦『山月記』解説と感想文

 

第6位『恋文の技術』


紳士淑女よ、意味もなく、手紙を書け!
……いいこと言ってますか?
(ポプラ文庫,337頁)

 京都から遠く離れた研究所で守田一郎はせっせと手紙を書く。
 文通修行と題されたそれは、さまざまな相手となされる。
 友人とは恋の相談。ニーチェを読む妹には説教。生徒へは威厳を示す。
 本当に想いを届けたい相手には、なかなか手紙を書けない。それがもどかしい。
 この小説の面白いところは、文通相手に作者である森見登美彦氏も含まれているところだ。
 「第四話 偏屈作家・森見登美彦先生へ」「第7話 恋文反面教師・森見登美彦先生へ」など。
 独特のユーモラスな書簡体恋愛小説に仕上がっている。

 

第5位『太陽の塔』


「幸福が有限の資源だとすれば、君の不幸は余剰を一つ産み出した。
その分は勿論、俺が頂く」
(新潮文庫,228頁)

 水尾さんに振られた「私」は「水尾さん研究」と称し彼女のストーカーとなった。
 失恋を経験した男が、その妄想力と行動力で京都の街を自転車で失踪する。
 これは、冴えない大学生の独白で描く、失恋ファンタジー小説である。

 

第4位『ペンギン・ハイウェイ』


ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力をおこたらずに勉強するのである。
だから、将来はきっとえらい人間になるだろう。
(角川文庫,5頁)

 ぼくは毎日たくさんノートをつるし、たくさん本を読む。
 ぼくの住む街にとつぜんペンギンが現れた。
 ぼくはペンギンと、歯科医院のお姉さんの研究をすることにした。
 ウチダ君とプロジェクト・アマゾンも進めるし、ハマモトさんと<海>の研究もする。
 少年の夏休みは、忘れられないものになるだろう。

<関連リンク>

いつか大人になって思い出す夏|森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』

 

第3位『有頂天家族』


狸なのだから、しょうがない。
これもまた、阿呆の血のしからしむるところだ。
(幻冬舎文庫,105頁)

 「面白きことは良きことなり!」「阿呆の血のしからしむるところ」が口癖の狸・矢三郎が京都の街を駆け回る。
 それは家族のためであったり師匠の天狗のためであったりする。
 ライバル狸一家や、狸を忘年会で食べる人間たちと対立しながらも、矢三郎は上手く切り抜けていく。
 毛玉が巻き起こす大騒動を描いた森見登美彦の傑作ファンタジー小説。

<関連リンク>

「あの夜、月を観て弁天が泣いたのはなぜ?|森見登美彦『有頂天家族』」

 

第2位『四畳半神話大系』


三回生になったその春、私は四畳半に籠もって暮らしていた。
五月病にかかったわけでもなく、世間が恐ろしくなったわけでもない。
四畳半に立て籠もって外界と隔絶し、
静謐な空間において己を今一度鍛え直すためである。
(角川文庫,299頁)

 大学三回生の「私」は入学前に想像していたバラ色のキャンパスライフを送ることができず四畳半に立て籠もっていた。
 悪友・小津には振り回されるわ、ナス顔の師匠・樋口には無茶を言われるわ、惚れた乙女の明石さんとはなかなかお近づきになれない。
 4つの平行世界で彼らは違う物語を紡ぐ。
 それらの短編は書き出しがすべて一緒である。
 猫ラーメンやカステラを食べ、コロッセオや「香織さん」に気をとられる。
 森見節全開の、パラレルワールド・四畳半小説。

 

第1位『夜は短し歩けよ乙女』


彼女はふんわりと笑った。
夜を司る神と偽電気ブランこそが与えたもう、真善美うち揃った笑みだった。
(角川文庫,71頁)

 「先輩」は黒髪の乙女が気になりつつも、なかなか距離を詰めることができないでいた。
 酒の飲み比べをしたり、古本市で暑中我慢大会があったり。
 プリンセス・ダルマ出演「偏屈王」を鑑賞したり、風邪を引いたり。
 さまざまな珍事件を通して「先輩」と黒髪の乙女は結ばれるのか?
 夜は短し、歩けよ乙女。
 恋愛ファンタジー小説の傑作である。

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

 森見登美彦氏の小説はどれも人気が高い。
 今回挙げたものは必ずどこの書店にも置いてあるだろう。
 またアニメ化した作品もあり(第3位から第1位はすべて映像化している)、そちらから入るのもオススメだ。
 ぜひ一度は手にとって、森見ワールドを堪能して欲しい。

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