※引用はすべて角川文庫による
目次
あらすじ
ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。
毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。
ある日、ぼくが住む郊外の街に、突然ペンギンたちが現れた。
このおかしな事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした――。
少年が目にする世界は、毎日無限に広がっていく。
第31回日本日本SF大賞受賞作。
解説・萩尾望都
(裏表紙)
きょうはたくさん本を読む日と自分で決めたので、森見登美彦『ペンギン・ハイウェイ』を読む。冒頭が「ぼくはたいへん頭が良く、しかも努力を怠らずに勉強するのである。だから、将来はきっとえらい人間になるだろう」と、阿呆大学生に育ちそうな小学生の独白から始まるのでわくわくしている。
— KKc (@KiKuchatnoir) 2015, 3月 11
『ペンギン・ハイウェイ』は小学四年生の「ぼく」アオヤマ君の一人称で語られるひと夏の物語。
アオヤマ君はノートをいつも持ち歩いていて、そこにいろいろな研究について書き込む。
研究は大きく分けて三つだ。
- お姉さんについて
- プロジェクト・アマゾン
- <海>について
「お姉さんについて」はアオヤマくんが行く歯科医院に勤めるお姉さんの謎を解くことが目標。
「私というのも謎でしょう」
お姉さんは言った。
「この謎を解いてごらん。どうだ。君にはできるか」
(45頁)
「プロジェクト・アマゾン」はウチダ君と共同で街を探検して、水路の源をさぐる研究。
ぼくとウチダ君は水路をたどってみることにした。
どこから流れてくるのか、水源を突き止める調査だ。
「プロジェクト・アマゾン」と命名すると、ウチダ君はたいへんよろこんだ。
(55頁)
「<海>について」はハマモトさんとの共同研究で、彼女が名づけた<海>という物体について観察と実験をし、その正体を探っていく。
ぼくらは<海>の研究者として、理科の教科書にのるかもしれない
(147頁)
『ペンギン・ハイウェイ』はこれらの研究を通してアオヤマ君が成長していく「ビルドゥングスロマン」だ。
小学四年生で「少年」の彼が大人になっていく過程を描く小説である。
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アオヤマ君の名言・格言
『ペンギン・ハイウェイ』の主人公・アオヤマ君の発言は、すこし大人びているが、それでもやっぱり小学生らしさを感じずにはいられない。
ここではそんなアオヤマ君の名言・格言のうち、私が個人的に面白いなと思ったものをピックアップした。
本編を読んだ方はどんなシーンでの言葉なのか、ぜひ思い出していただきたい。
自分の満足のためにほかの人にがまんしてもらうには、それなりの理由と手続きが必要だ
(16頁)
「怒りそうになったら、おっぱいのことを考えるといいよ。そうすると心がたいへん平和になるんだ」
(51頁)
大きいということは立派なことだ。なにしろ、ぼくは小さい。
(62頁)
ぼくにはかき氷を自由に食べる権利がある
(196頁)
タイトルの意味
ペンギンたちが海から陸に上がるときに決まってたどるルート
(24頁)
アオヤマ君は街にとつぜん現れたペンギンに関してメモをノートにとる。
その項目のタイトルを「ペンギン・ハイウェイ」と名づけ、上のような説明が付け加えられる。
でも「ペンギン・ハイウェイ」の意味はそれだけではない。
物語のラストでお姉さんはアオヤマくんの前から姿を消す。
その後アオヤマ君はまたお姉さんに会うことができると信じ続け、再会したときに立派な大人になっていることを決意する。
「ペンギン・ハイウェイ」とは、アオヤマ君が少年から大人になるためにたどるルートのことも表しているともいえる。
彼にとっては、その先にお姉さんがいる道のりのことも指すのである。
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Twitterやってます。
@KiKuchatnoir 読み終わりました。こりゃ阿呆大学生にならないなきっと。
— KKc (@KiKuchatnoir) 2015, 3月 11