目次
あらすじ
日色拓のお隣に引っ越してきた真中凛は、まっすぐな女の子。
対して、拓はできるだけトラブルにかかわりたくない性格。
正反対のふたりには、それぞれ秘密があって——
<正直でいるというのは、自分の思いや考えを押し付けるんじゃなくて、わかってもらおうとすることじゃないか>
空いた時間にかしこくお小遣い稼ぎ!
【読書感想文】原稿用紙3枚(1200字,60行)
海外のドラマや映画だと「このチキン野郎!」という言葉は、けっこうひどい悪口として使われています。
グーグルで検索したところ「チキン」という悪口は、和訳すると「この腰抜け!」だそうです。これは確かに言われたとしたらむかっときます。私は今まで腰をぬかしたことはありませんが、腰回りがすごく筋肉痛になり、歩くのもままならなかったことがあります。このときに「腰抜け野郎!」と言われたとしたら、たいそういらっとしたに違いありません。
人間は、びびったときやぞわっとしたときに肌が泡立ちます。これを「トリハダがたつ」と言いますが、この「トリ」はニワトリつまり「チキン」のことです。ニワトリの羽根の下にある皮膚はぶつぶつしているため、このように言われるようになったのでしょう。何かに怯えたりおじけづいたりしている状態が、ニワトリの肌と似ている。だから、そんなふるまいをしている人を「チキン」と呼んだのだと私は思います。
『チキン!』と名付けられたこの小説は、弱気な拓と、強気な凛のふたりを中心にしています。はじめは拓が「チキン」だとばかり思っていましたが、読み進めるうちに凛も「チキン」なのでは、と思いようになりました。
めんどうなこと、いやなこと、トラブルになりそうなことから避けるように過ごしてきた拓。彼が「チキン」だと考えるのはけっこう自然だと思われます。言いたいことをがまんせず言い、トラブルに巻き込まれることをいやがらず、まっすぐ生きている(ように見える)凛は、あまり「チキン」には見えないかもしれません。
でも、『チキン!』の表紙には凛が描かれています。ということは、やはり凛も「チキン」と見るべきだということだと私は思いました。
凛のどこが「チキン」なのでしょうか。
ニワトリは、上にも書いたように、一見して「トリハダ」には見えません。厚い羽毛によって、巧妙に隠されています。考えてみると、凛も同じです。彼女は将棋のコマ「香車」のようにまっすぐしか進めない、はっきりした女の子だと描かれていますが、実は、そのように振る舞うのには、理由がありました。物語が進むと、凛は行動の下に悲しい理由を持っていることが明らかにされます。
これは、ニワトリが羽根の下に泡立ちを持っていることと似ています。見えないところに意外な素肌を隠し持っている。だからこそ著者は、凛を大きく描いたものを表紙に採用したのだと思いました。
ちなみに私の好きな食べ物は鳥のからあげです。食卓に並ぶと思わず「チキン!」と叫んでしまいます。人前でやると恥ずかしいので、ニワトリのように、外では大声を出すのを控えていますけれど。
(1094字,原稿用紙2枚と19行)
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おわりに
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