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「日本人の血」をざわつかせる本
著者は、私の中では「芸人」という位置づけです。
(どうして「命の授業」なんて本を出すんだ? とてつもない難病から回復したとか?)と思いましたが、表紙を見て納得がゆきました。
彼は「命」の漢字を使ったギャグをしていたのでした。
というわけで本書は「生命の尊さ」を説く本というよりは、漢字についていさまざまな考察を披露する本です。
ほとんどの考察は「こじつけ」であり、そこには著者の確信以外にほとんど根拠がありません。
私はそれがいいとか悪いとかを言いたいのではありません。
そうではなくて、本書を読んで、解釈すること、考えることの自由さだとか、楽しさのようなものを感じられたら素敵だな、と思いました。
発想することや、自分なりの解釈をすることはとても楽しい。
一見しただけでは理由がわからないものに理由を与えたり、そこに到るまでの過程を想像したりすることは、人間に大きな喜びを与えます。話が逸れますが、探偵小説が長く人気を保っているのは、そのことに理由の一端があるように私は思います。
所与の事象をパーソナルに解釈すること。
それは古代日本に大陸から漢字が「輸入」されたときに私たちの先祖がおそらく行ったことであろうこととに、たぶん通じています。
漢字に対して、日本人は訓読みという新しい解釈をし、さらにひらがなやカタカナを創造しました。
だから本書は、太古から続く「日本人の血」を呼び起こすような効果があると私は思います。たぶんこの本を読んでウズウズするような人を「日本人」と言ってもよいのではないか、とも思いました。
最後に蛇足ですが、本書を(面白いな)と思った方は、白川静の本に手を出してみるとよいと思いました。少々難しいですが、読みごたえはあります(学術的な裏づけもあります)。
(756字)
作品情報
著者:ゴルゴ松本
おわりに
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