森見登美彦『夜行』感想|世界はつねに夜

あらすじ

 彼らは、鞍馬の火祭りにて再会する。
 10年前に姿を消した女性のことを考えながら。
 ときおり姿を見せる謎の銅版画『夜行』とは何か?
 世界はつねに夜。

感想

 「夜行」と「曙光」というふたつの言葉があります。

 

 「夜行」とは「夜」に「行」動すること。
 「曙光」とは「曙」(あけぼの、夜明け)の「光」のこと。
 反対の意味、相反する意味に見えます。

 

 どちらも他方を必要としていないかのように見えますが、どちらも互いに相手があってこその存在だと、『夜行』を読んで思いました。

 

 森見登美彦の作品では『夜は短し歩けよ乙女』や『四畳半神話体系』、『有頂天家族』など「曙光」系なものがポピュラーだと思います。明るくて、にっこり・ほっこりでき、ホロリもできるような作品が一般に好まれます。私も大好きです。

 

 それに対して、森見登美彦は『きつねのはなし』や『夜行』のような「夜行」系な作品を書くこともできます。

 

 私は初めて『きつねのはなし』を読んだとき(どうしてこんな作品を森見登美彦は書くのか?)と不思議に感じましたが、『夜行』を読んで納得がいきました。

 

 森見登美彦は、「曙光」系の物語を書くために「夜行」系の物語を書いているし、「夜行」系の物語を書くために「曙光」系の物語を書いているのでしょうきっと。

 

 どちらかというと「曙光」系の話が私は好きですが、上記のようなことを考えてみたら、「夜行」系の話もいいんじゃないか、森見登美彦にとって必要なことだとも思うようになりました。

 

 ころころ考えることが変わるのは、阿呆の血のしからしむところか知らん。

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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