あらすじ
国連本部に飾られていた『ゲルニカ』が、突然消えて無くなった。
反戦のシンボルとなっている作品に、誰が「暗幕」をかけたのか?
<芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ。>
感想
なにかが暗幕で覆われているということは、なにかが隠されているということであり、その隠されているなにかを探し当てるというのが読書をする際のキーとなってくると思います。
では、なにが隠されているのか?
表紙にもなっているピカソ『ゲルニカ』は、中学校などで取り上げられることもあるくらい、有名な絵画です。スペイン内戦を描いたものだと伝えられています。
「暗幕」は何の比喩か。
自分がなにかに暗幕をかけるということは、なにかに対して目をつぶることを意味します。
臭いものには蓋をせよ、見たくないものからは目をそらす、目をつぶる。
「暗幕」はべつに物理的なものでなくてもよいです。
人は見たいものだけ見るし、見たくないものは脳が見ないように処理をする。
忘れるということは、考えたくないということ。
スペイン内戦は、ほんとうに凄惨な戦いだったと聞いています。
パリ万博のスペイン館に飾られた『ゲルニカ』。メッセージ性によって、ピカソは亡命を余儀なくされました。
ナチスはスペインの都市「ゲルニカ」に対して、無差別爆撃を行いましたが、それに関して、政治的な「暗幕」がかけられることとなったのです。
ナチスのある将校が『ゲルニカ』を見てピカソに訊ねました。
「この絵を描いたのは貴様か?」
ピカソは答えた。
「いいえ。この絵の作者は、あんたたちだよ」
暗幕をかけたことを、彼らは自覚していたのでしょうか。
おわりに
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