【感想と考察】森博嗣『魔法の色を知っているか? What Color is the Magic?』

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あらすじ

 ハギリはチベットで開催されるシンポジウムに参加する。
 チベットにある特別区では、今でも人間の子どもが生まれていることを知る。世界中で子どもが生まれなくなっているというのに、なぜ?
 政府に反乱する者によってシンポジウム会場は襲われる。

内容について

※本記事はネタバレを含むため、読後に読むことをおすすめします。

読んだ人のためのダイジェスト(メモ)

プロローグ

 空港でアネバネ(ハギリの新しいボディガード)と出会う。

一連の問題 Sequence of matters

 チベットへ。人工生体技術に関するシンポジウム。
 ツェリン・パサンとともにナクチュ特別区へ。リョウ博士から、生まれた子どもがウォーカロンメーカによって買われているという噂を聞く。

一連の危険 Sequence of crises

 テンジン知事が襲われる。「ジアンサ、イズ……ハーネーム」
 ナクチュでヴォッシュ博士と邂逅。

一連の生命 Sequence of lives

 ヴォッシュ博士との対話。
 カンマパと話す。

一連の伝承 Sequence of legend

 真っ黒の猫。
 反乱軍に踏み込まれる。黄色のリーダ兵。
 「魔法の色を知っているか?」

エピローグ

 マガタ博士と神殿で。

「魔法の色を知っているか?」タイトルの意味と感想

 前作『彼女は一人で歩くのか?』において「魔法の色」は3色出てきました。
 赤と黒と白。
【関連リンク】「【感想と考察】森博嗣『彼女は一人で歩くのか? Does She Walk Alone?』
 本作では「赤」の魔法の効果が明らかになりました。さらに「紫」の魔法の効果も明らかになっています。

赤い魔法

 「赤い魔法」は前作『彼女は一人で歩くのか?』においてハギリのピンチを救った言葉です。
 「赤い魔法を知っているか?」の発言によりウォーカロンの動きが止まりました。そして、バス襲撃事件は解決へと向かいました。
 このことから「赤い魔法」という言葉には、ウォーカロンの行動を停止させるような効果があるものと推測されましたが、前作の時点では確証が得られませんでした。
 しかし今作『魔法の色を知っているか?』でヴォッシュ博士により「魔法の色」はウォーカロンの「安全装置」にあたる言葉だという裏づけがなされました。
 「魔法の色を知っているか?」と問いかけられると、ウォーカロンは「入力待ち」の状態になる。その後に「正しい魔法の色」を聞くと、ウォーカロンは動きが止まる。
 マガタ博士がプログラムした「魔法のような」機能だと私は思いました。

紫の魔法

 テンジン知事がハギリに伝えた「ジアンサ、イズ……ハーネーム」とは、反乱軍のリーダ兵を停止させるための「魔法の色」でした。反乱軍は元々知事の指揮下にあったので、彼はその「魔法の色」を知っていたのでしょう。
 英語で書くとおそらく”The answer is her name.”なので、私は最初”her”がマガタ博士のことだろうと思っていたのですが、ウグイのことでした。
 ウグイは偽名としてシキブ・ムラサキという名前を使っていました。テンジンは彼女の名前を覚えていて、だからハギリに対して「彼女の名前」と言ったものと思われます。
 窮地にあったハギリはそのことに気づき、リーダ兵が攻撃してきたときに、魔法の色は「ムラサキ」と答えることができました。

魔法の色

 前作の最後で「赤い魔法」を、今作の最後で「紫の魔法」を使用したことで、停止効果のある「魔法の色」はウォーカロンごとに異なることがわかりました。
 ヴォッシュ博士が発言し、効果が現れなかった「黒い魔法」「白い魔法」「緑の魔法」も、次作以降で効果のある「魔法の色」となる可能性があるということです。
 博士、内出血で済んで良かったです。

「Wシリーズ」次作以降の刊行予定

『風は青海を渡るのか?』
『デボラ、眠っているのか?』

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

おすすめ小説リスト」はこちらから。

記事に対する感想・要望等ありましたら、コメント欄かTwitterまで。

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コメント

  1. けy より:

    お久しぶりです。『カラマーゾフの兄弟4&5巻』を読み終わりました。
    「どうせなら」が殺人の動機なんて恐ろしいですね……。予想外でした。
    また、裁判をする前に読者は真相を知っているというのが良かったです。真相を知っているため、一見有利な検察側に滑稽さや「もう喋るなカテリーナ!」と苛立ちを覚え、弁護側を応援できる。裁判を面白く読むことになるとは思いませんでした。
    そしてエピローグが大好きです。カテリーナとグルーシェニカは不倶戴天の敵になっていましたが、仲良くなる可能性がゼロでないことを臭わせているのがニクイですね。また、アリョーシャが一巻の頃と比べてものすごく頼もしくなっていて、気持ちよく読み終えることができました。

    『カラマーゾフの兄弟』は「些細なすれ違いが生んだ悲劇」と要約すれば単純なお話でしたが、単純な構造をここまで複雑にしながら緩急をつけて面白い小説にできていたのは見事。人間の衝動を上手く描けていたのも素晴らしい。さらに、思想をこれでもかというほど盛り込み、何度も読み返したくなるような作品に仕上げていたのは凄いです。
    そしてこれが前編ということがダメ押しです。まだ半分だけど続きは永久に読めない……。完璧に完成されていながら未完、こんなの伝説的な作品になって当然じゃないですか!

    ドストエフスキーが最高クラスの小説家と絶賛されていることに納得しました。見事としか言えない作品でしたね。ただ、ものすごく疲れました。こんな小説に出会ったのは初めてです。

    • KKc より:

      コメントありがとうございます。
      よい読書をしたのが感想文から伝わってきます……すごい。
      『カラマーゾフの兄弟』は未完なところが作品の価値をさらに上げているんですよね。