『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』あらすじと感想と名言

※引用はすべて大根仁著(岩井俊二原作)『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』角川文庫による

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あらすじ

 花火大会の日、典道はなずなに誘われなかった。
 不思議な球体を使い、誘われた未来へ典道は旅立つ。
 そこは、風力発電のプロペラが逆回転で、スイカバーが丸く、花火が平らな世界だった……。

登場人物

島田典道(しまだ・のりみち)

 本作の主人公。中学生。釣具屋の息子。
 マリオカートで使うのはルイージ。
 なずなのことが好き。
 <もしもオレがぁ!!!>(79頁)

及川なずな(おいかわ・なずな)

 本作のヒロイン。中学生。
 小学5年の時に東京から茂下町に引っ越してきた。
 松田聖子『瑠璃色の地球』を歌うのが得意。
 <あたしがアリスで、典道君が白うさぎなんじゃない?>(226頁)

安曇祐介(あづみ・ゆうすけ)

 医者の息子で典道の幼なじみ。中学生。
 なずなのことが好き。
 最新のマウンテンバイクに乗る。
 ワンピースの最新巻を欲しがっている。

田島純一(たじま・じゅんいち)

 典道のグループのリーダーかつムードメーカー。中学生。
 スケボーに乗り、いつも生産性のない会話を楽しんでいる。
 <オイカワだけに……おい! 可愛い!>(26頁)

稔(みのる)

 純一の子分。中学生。
 キックボードに乗っている。

三浦先生(みうらせんせい)

 典道などのクラスの担任。
 ママチャリに乗っている。

太った女子(ふとったじょし)

 なずなの後ろの席に座っている女子。
 夏休みにディズニーランドに行くことをとにかく自慢したい。

名言

子どもの時は、水中で目が開けられた。>(7頁、冒頭)

なんかショボい尾道ってカンジですね。寂れてていいカンジだけど>(16頁)

なんで、あたしはここにいるのでしょう?>(34頁)

花火って横から見ると丸いと思う? 平べったいと思う?>(46頁)

スイカバー三角形にしたヤツって天才だと思わねえ?>(57頁)

は? スイカバーは丸いじゃん>(107頁)

本来目指していた場所なんてどこにもないんだ>(187頁)

なずな……二人きりになれる世界に行くぞ>(202頁)

感想

灯台のある岬

 なずなが電車の中で歌った曲は、松田聖子(作詞が松本隆)の『瑠璃色の地球』でした。「夜明けの来ない夜はないさ」という歌い出しが印象的な音楽です。

 曲のシチュエーションは灯台のある岬。『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』においても、灯台のある岬は重要な場所です。そこは「花火を横から見ることのできる場所」だからです。ついでに申し上げると、『瑠璃色の地球』と同じように「暗い海」を見下ろす場所だからです。

 典道が灯台にいるときは、決してハッピーエンドを迎えることができません。

 花火を横から見て「平らだ」と考えたときも、なずなと一緒にそこに逃げ込んだときも、最終的に彼は「もしも玉」を投げています。

 そこにいることでハッピーエンドにたどり着くことができない暗い気持ちになるという点で、『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』においても『瑠璃色の地球』においても、「灯台のある岬」は「暗い海」を見下ろす場所であると私は思いました。

もしも玉

 主人公・典道が「もしもあの時」と強く願いながら「不思議な玉」を投げると、「あの時」に戻ることができます。

 「もしもの世界」に行くことができるので、彼は「もしも玉」と呼んでいます(わかりやすいけど、あまりかっこよくない名前だと思いました。中学生らしいネーミングセンスなので、ふさわしいといえばふさわしいのですけど)。

 典道は劇中何度か「もしも玉」を投げます。

 見ている方としては、そんなに「何度も投げなくても」と思いましたが、よくよく考えてみると、人生は次の瞬間に何が起こるかわからないものですから、しょうがないことかもしれないな、と納得した気持ちになりました。

 私自身の人生を振り返ってみても、あのときあの人にああ言わなかったらな、とか、あのときあそこに行っていたらな、とか、あのときあれをしなかったらな、とか、そのように思うことはたくさんあります。典道のように「もしも私がぁ!!!」と叫びながら球状のものを投げつけたくなる気持ちにもなります。

 『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』では「もしもの世界」がありましたが、私たちの世界に「もしも」はありません。

 ということは、典道がラストシーンでなずなに対して感じたのと同じく、私たちは「もしも」なんて無い「たった一つの世界」に生きなければなりません。
 花火のように、打ち上げられたらおしまいです。なずなの父親のように。

 だから、典道のように一日に何度も「もしも!!」と叫んだり思ったりしないよう、毎日を悔いなく生きようと努力しつづけねばな、と強く思いました。

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

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