冷めても温まるものは|川口俊和『コーヒーが冷めないうちに』あらすじと感想

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あらすじ

 喫茶店「フニクリフニクラ」の椅子には秘密がある。
 そこに座りコーヒーを頼むと、タイムトラベルができる。
 制限時間は「コーヒーが冷めないうち」。
 時間旅行から帰った後のコーヒーは、どんな味がしますか?

感想

 できることなら、変えたい過去があります。

 昨日でいうと、水たまりに勢いよく足を突っ込んだこととか。

 先週でいうと、電気をつけたまま寝てしまったこととか。

 先月でいうと、砂糖と塩を間違えてしまったりだとか。

 その他にも、ここには書けないことで恥ずかしい過去は山ほどあります。

 『コーヒーが冷めないうちに』には、過去に戻ることのできる喫茶店が登場します。
 過去に戻ることができるとはいっても、タイムトラベルものの定石どおり、決定された過去を変えることはできません。

 過去には行けるけど過去は変えられない。
 「そんなの意味ないじゃないか」と言いたくなるような条件ですが、それにも関わらず登場人物たちが過去へ行きたがるのは、なぜでしょうか。

 世界の終わり『死の魔法』に「自分を変えることは世界を変えること」という歌詞があります。
 過去に行けたとしてもその事実を変えることは叶いませんが、自分の心持ちを変えることはできます。

 こだわっていた過去を今一度体感することで、そこから戻ってきた自分が変わり、これからの未来が、世界が、ほんの少しだけ良くなるような気がします。

 変えられない過去だとしても、そこから帰られないわけではない。

 「行って帰ってくる」ことで自分が良い方向に変化すること。一見不毛に見えるタイムトラベルに登場人物たちが向かうのは、旅立つ前にそのことを無意識的に確信していたからかもしれません。

 コーヒーが冷めても、変わりたい気持ちはかえって温まるのだなと私は強く思います。

おわりに

KKc
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