貴志祐介『悪の教典』感想|英語より殺人が得意な先生

※名言の引用はすべてノベルス版による

目次

あらすじ

 

 不良、モンスターペアレント(非常識な保護者)、学校の裏サイト、集団カンニング、教師による淫行など数々の問題を抱える私立晨光学院町田高校。

 

 そこに勤める英語教師・蓮実聖司(はすみせいじ)は、有能で人気者。
 しかし裏では自分に都合の悪い人間を秘密裏に抹殺していく殺人鬼であり、一部の生徒や教師から疑われ始めている。

 

 修学旅行が終わり、生徒が文化祭の準備にとりかかっていた頃、蓮実は邪魔になった女子生徒を自殺にみせかけて始末しようとするが、手順が狂い殺人の嫌疑が掛かりそうになる。

 

 蓮実はそれを隠蔽するため、文化祭準備のため校舎に泊り込んでいた担任しているクラス全員を、同僚の仕業に見せかけて散弾銃(ショットガン)で皆殺しにする決意をする。
 血塗れの大惨劇の幕が上がる。

 

 

感想

 『悪の教典』は貴志祐介による戦慄のサイコホラー傑作である。
 主人公はすごい悪人なのに「ハスミン」などと呼ばれる人気者である。

 

KKc
 【ハスミンのプロフィール】

・32歳独身男
・京都大学法学部中退→ハーバード大卒
・2年4組の学級担任
・ESS(英会話部)顧問
・容姿端麗、頭脳明晰、スポーツ万能
・女子生徒による親衛隊がある
・同僚やPTAからの信頼も厚い
・愛車はダイハツ・ハイゼット

 

 なんとまあ「ザ・主人公」のような設定。

 だがその正体は、決定的に他者への共感能力に欠けたサイコパス(反社会性人格障害)である。

 邪魔者は人間・動物問わず簡単に殺すことができる。

 

KKc
ふつうだったら「何この人!」と思うはず。
共感できたらあなたも「サイコパス」!?

 「ハスミン」はきっとあなたが想像するよりずっとぶっとんでいます。

 彼のクライマックスでの凶行は、それまで蓮実が積み上げてきたものを一気に崩し壊すかのような印象がありました。

 

『悪の教典』タイトルの意味は?

 「きょうてん」で変換すると「経典」と「教典」が出てきます。
 これらの違いは何でしょうか?

 

 「経典」は広辞苑によると

 

教徒の信ずべき信仰内容や守るべき信仰生活の訓戒・規範を示した文献。
仏教の教義の典拠となる書籍、
キリスト教の聖書、
イスラム教のコーラン。
(広辞苑第5版)

 

 なるほど。宗教でいちばん大事な本ってことですね。
 では、「教典」はどうでしょう。

 

教育上または宗教上の基本となる書物。
(広辞苑第5版)

 

 ふむふむ。「経典」とあんまり変わらないのでは?
 でもここでのポイントは「教育上の」とあるところですね。
 『悪の教典』の舞台が学校だからこそ、著者は「教典」と名づけたのでしょう。

 

名言

 

「問題は過去じゃない。未来です」
(20頁)

 

「OK! everybody!
避難訓練です。
整然と、粛々と避難しましょう」
(163頁)

 

「俺には、感情がないらしいんだ」
(295頁)

 

パーティは、まだまだこれからだぜ!
(626頁)

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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