※引用はすべて山中伸弥(緑慎也=聞き手)『山中伸弥先生に、人生とiPS細胞について聞いてみた』講談社+α文庫による
目次
あらすじ
本書で語られているのは「iPS細胞ができるまで」と「iPS細胞にできること」です。
山中先生が医師を志した時点からはじまり、iPS細胞のこれからを描いて結んでいます。
おまけとして山中先生へのインタビューも掲載されています。
【読書感想文】原稿用紙3枚(1200字,60行)
ほんとうに頭が良い人は、どんなに難しいことでも、それを誰にでもわかる言葉で表現し、それを誰にでも理解させてしまうと私は思います。魔法のように。山中先生はまさにそのような人物の典型だと思いました(なんとなくビジュアルも魔法使いっぽい)。
「はじめに」から読みはじめたとき、私はほとんど何も知らない素人であるのに、なんとなくすらすらとページがめくれ、不思議なことにiPS細胞についてなんだかわかったような気分になりました。ただの一読者にそんなふうな感想を抱かせるなんて、並みの人間にはできないことなんじゃないかと感じました。ときどき挿入される簡単な図解も、とても適切でわかりやすかったし。
そんなわけでどんどん読み進めていくと、最初に私が思ったようなことが書かれていました。引用します。
<研究者は、ただ研究だけしていればよいのではありません。論文を書いたり、学会や講演会で発表して、自分の研究成果を広くわかりやすく伝えることも研究者の大事な仕事です。>(52頁)
山中先生はアメリカ・サンフランシスコのグラッドストーン研究所にいたころに「わかりやすく伝える力」を養ったと本書には書かれています。何かについて発表して、それを録画したものを友人たちと検討した、と述べています。
研究者にとって「プレゼン力」は大切だと私も思います。誰かに自分の研究の有用性を伝えられなければ、必要な援助を引き出すことはできません。誰かに「これはすごい」と思ってもらわなければ、物理的に研究を行うことができない場合は多いのでは、と思います。
だから、研究をしようと思うのならば、勉強だけを、学問だけを必死にやるのではなくて、自分(のやりたいこと)を表現する力も合わせて伸ばしていかなければならないと思いました。
トップにいる研究者はコツコツと孤独に実験をする存在ではありません。彼らは自分自身を周りに理解させることに長け、それによって多くの人たちに支えられ、走り続けることができているのです。
(48行,原稿用紙2枚と8行)
おわりに
過去に書いた「読書感想文」はこちらから。
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