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読書感想文の水増しについて
読書感想文をどうしても書かなきゃならない状況になることってありますよね。
それでとりあえず思いつくままに書いてみたけど、どうにも文字数が足りない……
文章の水増しです。
新しい意味のことをほとんど付け加えずに、文字数を増やす方法です。
あってもなくてもいいようなことを付け足すのです。
そうすれば、前後の文章の関係をあまり壊すことなく、マス目だけが埋まっていきます。
というわけで今回は「文字数が足りないけど、もう書くことがない!」と悩んだときに使えるテクニックを紹介します。
ご一読して、試してみてください。
読書感想文の水増し方法
・改行する
やりすぎは禁物ですが、突っ込まれたら「読みやすくしただけです」という言い訳ができるので使い勝手はたいへんよいです。
・ひらがなを多用する
水増し前の文章はこうなっています。
私は『走れメロス』を読んで感動した。メロスが水を飲む所。水の音を聴いたメロスは、走る力が残っていることを知り、走り出す。
そして、水増し後。
私は『走れメロス』を読んでとっても感動しました。たとえばメロスが水を飲むところのシーン。あそこで水の音を聴いたメロスは、はっとします。自分はまだやれるんだ、走る力がたくさん残っているんだ、よしっ、という気持ちになってまた走り出します。
「例えば」→「たとえば」
「所」→「ところ」にしています。
また、いらないと思われるような言葉も主にひらがなでたくさん入れています。
「とっても」「のシーン」「あそこで」「自分はまだやれるんだ」「たくさん」「んだ、よしっ」「また」などは、無くても意味が通じます。
たったこれだけで60字→117字まで増やせました。
・「です・ます調」で書く
「け、そんなことか。たった数文字増えるだけじゃないか」と思うことでしょう。
でも、チリも積もれば山となるというじゃありませんか。
案外バカにできない効果があるものです。
・言い換えて繰り返す
同じことを書いていても、使われている言葉が違えば、違う文になります。
芥川龍之介『蜘蛛の糸』で主人公であるカンダタは、上から垂れてきた糸に気づくと、それを伝って上へ登り始めました。
そして水増し後。
芥川龍之介『蜘蛛の糸』の主人公はカンダタです。『蜘蛛の糸』は彼を中心とした物語です。カンダタの小説なのです。カンダタは上から垂れてきた糸に気づきます。蜘蛛の糸です。タイトルにもなっている蜘蛛の糸です。その、垂れてきた蜘蛛の糸をカンダタは見つめ、それを登ってみようという気になります。登るのです。どこまで上がればいいかわからないのに、彼は登り始めました。蜘蛛の糸をです。
55字→184字です。
書いていて「くどいかな……」とも思いましたが、文字数を増やすためです。
心を鬼にして文章を水増ししましょう。
・ひと言はさむ
文章と文章の間に自分の気持ちや感想をはさむことで文字数の増加をはかります。
これも例がないとわかりづらいと思うので書きます。
まず水増し前。
『地獄変』の中で良秀は「右に出るものは一人もあるまいと申された位、高名な絵師」です。梅の花を描けば匂いが香るとうわさが立ち、似顔絵を描けばモデルになった人は弱って死んでしまう……良秀は他の絵師たちとはなにか違う男だったと書かれています。
そして水増し後。
『地獄変』の中で良秀は「右に出るものは一人もあるまいと申された位、高名な絵師」です。すごいですね。とても有名だったのですね。梅の花を描けば匂いが香るとうわさが立ち、似顔絵を描けばモデルになった人は弱って死んでしまう……ほんとに画家でしょうか。魔法使いみたいですね。良秀は他の絵師たちとはなにか違う男だったと書かれています。ふむふむ。
文章にツッコミを入れる感じで。
このテクニックは感想文を書ききって、それでも文字数が足りないときに使うといいでしょう。
なので、先に下書きをしておくか、パソコンで書いたときにしか使えないのが難点です。
・引用する
これが文章の水増し方法の紹介の最後になります。
引用とは、本文のある部分をそっくりそのまま丸写しすることです。
理由は4つあります。
- 引用するだけで文字数が増える
- 引用した箇所の言い換えが書ける
- 引用したところに対してひと言が書ける
- 自分がどうしてそれを引用したのか理由が書ける
どうでしょう。
たった一文引用するだけで、これまで紹介した水増しテクニックのほとんどが使えるじゃありませんか。
これが「引用」を最強の水増し方法たらしめる所以です。
以下に例を示します。
中島敦『李陵』で司馬遷は次のように語ります。
「一個の丈夫たる大司令司馬遷は天漢三年の春に死んだ、そして、その後に、彼の書残した史をつづける者は、知覚も意識もない一つの書写機械に過ぎぬ」(引用)
一人前の男子である大司令という役職の司馬遷は、天漢三年の春に死にました。だからそれ以降に彼が書き残した史記を引き継ぐ者は、何も感じず、何も考えることのないただの文章を書く機械なんですよ、ということです。(言い換え)ううむ。すごい決意ですね。(ひと言)私がこの部分を引用したのは、司馬遷の覚悟がよく表されているからです。(理由)
さりげなく「ひらがな」や「です・ます調」も混ぜ込んでいます。
ちなみにこれだけで244字です。原稿用紙が半分以上埋まりました。
まさに「引用」は最高の水増しテクニック。
一度使ってしまったらその虜になることうけあいです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回紹介した方法を駆使すれば、1200字だろうが2000字だろうが、どんな文字数だって怖くありません。
水増しをマスターすることで、自在に文字数を操れるようになるのです。
そうすれば、もう文章を書くことは怖くありません。
過去に書いた「読書感想文」はこちらから。
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