『ホイッパーウィル川の伝説』読書感想文|ケンタッキーと願いごと

あらすじ

 石ガールと呼ばれているジュールズが主人公。
 姉妹とキツネと森と川とファンタジィ。
 <悲しい話です……でも読みおえたとき、心があたたかくなっているのではないでしょうか

 

【読書感想文】原稿用紙5枚(2000字,100行)

KKc
ケンタッキーと願いごと

 

 シルヴィは死んだ後で、キツネに生まれ変わりました。
 生きた後で、生まれ変わったという見方もできます。

 

 「死」の反対は「生」だと思います。
 日本語では、死んだあとで生きていた期間をふりかえるとき「生前」といいます。
 なんとなく、意味としては「死前」が正しいように思えますけれど。
 でも、たぶん字面というか、縁起というか、「死」というあまりよくないイメージを持った言葉を避けるために、「死」の反対の「生」を使っているのだと予想します。

 

 フルーツの梨(みずみずしくて大好きです)も、梨農家の方だったか昔の方だったかは、「ありの実」と呼んでいる(いた)という話を聞いたことがあります(気のせいだったらすみません)。
 自分たちが育てて売っている作物が「無し」というのは、なんだか気分が盛り下がるから、そうしているのかもしれません(ポジティブな小話なので好き)。

 

 話を「生前」に戻します。

 

 「生きる前」という視点に立てば、「死」の代わりに「生」を使った別の理由を見つけることができます。

 

 私たちは死ぬまでは、どんな人生だったかを決めることはできない、という考え方に立ってみます。

 

 「生きている限りどんなことだってできるよ!」というのは、希望に満ちた高齢の方からしばしば聞かれる言葉です。

 

 たとえば定年退職後に新しい趣味を始めたり、フランス語を勉強したりすることは、そのような「死ぬまでが人生だ」という思想に立脚した行動だと私は思います。

 

 毎日縁側でお茶をすする人生も魅力的ですが、そのようなチャレンジングな人生もまた良いものだと思います(そういえば、「ケンタッキーフライドチキン」で有名なカーネル・サンダースさんも、かなり年をとってから、揚げたチキンを売る商売を始めたそうな)。

 

 「人事を尽くして天命を待つ」ということわざがあります。

 

これは、願いごとというか、自分のやりたいこと、かなえたいことのために努力して、できることを全部やった結果、あとは待つだけ……のような状況に使うときが多いです。

 

 努力以外のことでできることを探せば、最終的には祈ることか魔法くらいしかないんじゃないかと思うので、確かにな、と思うことわざです。

 

 願いを現実にするための一番の近道は努力です。才能ではないと私は思います。

 

 石に願うくらい強い意志を持っているのならば、生前のシルヴィのように、毎日厳しいトレーニングをして、その願いを成し遂げようとするはずです。

 

 「自分には才能があるから、そんなに努力しなくてもいいや」と思う人には、きっと成功は訪れません。

 

 「努力したりがんばったりすると、どうしても他人と比べたくなってしまう。他人と比べて自分が劣っていたりしたら嫌だから、そんなに努力しなくてもいいや」と思う人にも、成功は訪れないと思います。

 

 「ダイエットしたいね」とことあるごとに繰り返しながらも間食をやめられない人は、たぶん心の底では「ダイエットなんてしなくてもいいや」と思っていて、体重を減らしたりスリムな見た目になったり健康的な身体を手に入れることよりも、自分の「食べたい」気持ち、食欲を重視しているのだと私は思います。

 

 だから、その人がどんなことをしたがっているか、ほんとうに望んでいることは何か、ということを判断するためには、その人の発言や文章を見るのではなく、その人の行動やふるまいを見る方が有用だと思いました。

 

 『ホイッパーウィル川の伝説』のパパはふたつの願いを、彼自身の行動によって見事に叶えてみせました。
 石なんてなくても、ホイッパーウィル川の伝説なんてなくても、人はたぶん、どんな願いも叶えられるんじゃないかと私は思います。

 

 私も、人生でたくさん叶えたい願いがありますが、毎日の行動がその将来を実現するものであるかどうか、しっかり確認しながら生きていこうと、この本を読んで思いました。

 

 とりあえず、健康的に長生きするために、油たっぷりの大盛りラーメンを注文するのはできるだけやめます。

 (1636字,原稿用紙4枚と12行)

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

過去に書いた「読書感想文」はこちらから。

記事に対する感想・要望等ありましたら、コメント欄かTwitterまで。

読書感想文の書き方についての本を出版しました。おすすめです。