目次
あらすじ
祖父の一周忌に出席するため、莉子は母のふるさとを訪れる。
そこでおばさんから、蓮の開花は音がすると教えられる。
莉子は音を聴くため祖父の家に泊まることにした。
【読書感想文】原稿用紙5枚(2000字,100行)
夏の朝、と聞くとラジオ体操を思い出します。
小学生のころ、夏休みの朝、早起きして自転車をこいで、公民館の前で近所の人たちにおはようを言い、だらだらと身体を動かしていました。
私はいつもラジオ体操開始の数分前に着いていました。早起きできたときは、です。元々あまり早起きは好きではありませんでした。弟はきちんと毎日行っていた記憶があるのですが、私はいつも三日くらいしか行けなかった記憶しかありません。
だから『夏の朝』のタイトルを見たとき、あ、そういえば夏休みはいつもぐっすり眠っていたっけ、ということを感じました。暑さで目を覚ますまでは、いくらでも眠っていられました。
『夏の朝』の主人公・莉子も早起きに挑戦します。
それは私のようにラジオ体操に参加するという目的ではなくて、蓮の花が開くときの音を聴くという目的のためです。
「蓮が開花するときにはポンッと音がするんだよ」と教わった莉子は、ほんとうにそうなのか自分の耳で確かめてみようと早起きを決心します。そして朝に実際にその音を聴いた瞬間から、彼女の不思議な体験が始まりました。
私は『夏の朝』を読んで、「私がラジオ体操のために起きられなかったのはこれが原因か」と気づきました。早起きをするうえでいちばん大事なのは、自分の内側にある「やる気」でした。
ラジオ体操に行くと、カードにハンコをひとつ押してもらえることになっていました。夏休み終了後にそれを学校の先生に提出するのですが、もちろん私は三つほどしか押されていなかったのでたいへん怒られました。効果はあまりなかったと思われますけど。
また、ラジオ体操の時間よりも後に起きると、なんとなく家族に対して後ろめたい気分になっていました。勝手に家族の冷たい視線・態度を私は感じていたように思います。お昼ごはんの頃にはすっかり忘れてましたけど。
私は『夏の朝』の莉子の行動とこの経験から、人がなにかをする理由について考えてみました。
誰か、つまり外側から「やりなさい」と押付けられたことをするとき、「やる気」は弱くなり、自分すなわち内側からわき上がってきた「やる気」は強い、と思いました。たぶん『夏の朝』の中で重要なポジションを占める「古代蓮」の花も、そのことを暗示しています。
蓮の花は開花するときに「ポン」という音を鳴らすと書かれています。私はその音を聴いたことがありませんし、それは迷信だという人もいます。
でももし仮に鳴るとすると、どのようにして鳴るのでしょうか。その仕組みも考えてみました。
私がいちばん有力だなと思ったのは、つぼみが気体を蓄えていて、開く瞬間にそれが出る、という仕組みです。
たとえば口の中に空気をためておいて、少しだけほっぺたの力を緩めると、わずかに音がでます。これは自分で試したのでけっこう自信がある説です。
私の仮説によると、蓮の花は開花のさいに、自分の内側にある気体を利用していることになります。この「内側にある」というところが『夏の朝』で主人公・莉子が早起きした理由と重なることに私は気づきました。
内側にある気体の力を借りて咲く花の様子を見るのに、莉子は自分の内側の力(やる気)を利用していたのです。
私が『夏の朝』から得られた教訓は、「自分の内側から出る力を使った行動は強い」です。これがなかったので私はあまりラジオ体操にいけなかったのだと思います。もし仮に「ラジオ体操をする場所の花は朝しか咲いてないんだぜ」とか「ラジオ体操のあとの朝ごはんはとてもうまいんだぜ」ということを教えられていたのなら、過去は変わっていたのかもしれませんね。
(88行,原稿用紙4枚と8行)
おわりに
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