目次
あらすじ
島村は雪が積もる町に滞在する。
彼はその温泉街で出会った駒子と愛し合う。
冒頭
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。
向側の座席から娘が立って来て、島村の前のガラス窓を落した。雪の冷気が流れこんだ。娘は窓いっぱいに乗り出して、遠くへ叫ぶように、
「駅長さあん、駅長さあん。」
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【読書感想文】原稿用紙3枚(1200字,60行)
『雪国』の書き出しは有名です。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。」
私がこれを読んですごいな、と思ったところは三つあります。
一つ目は「国境」のところです。
私ははじめ、ここは「県境」の方が正しいのではないかと思いました。本の最後に付いている「注解」によりますとこのトンネルは、群馬県と新潟県の間のトンネルのことを指しているのだそうです。私がイメージする「国」と「国」、たとえばドイツとポーランドの間にあるトンネルのようなものではありません(その二つの国の間にトンネルがあるかどうか調べてはいませんが)。
「県境」ではなく「国境」と書いてあるのは紛らわしいです。私のように勘違いする人がいるかもしれません。「この物語は外国のお話なのだな」と思ってしまう人がいるかもしれません。そのような誤解のもととなる文章を、著者はどうして書いたのでしょうか。
たぶん川端康成がそう書いたのは、その後に続ける言葉のためだと思います。タイトルにもなっている「雪国」です。この書き出しがもし「県境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」だとするとなにか引っかかるものを感じます。「雪国」と並んでいて自然なのは「県境」よりも「国境」です。これを書くときに私だったら特になにも意識しないで「県境」といちばん始めに持ってきてしまうと思います。だから私はこの「国境」のところがすごいと思いました。
二つ目は「夜の底が白くなった」のところです。
まずとにかく「夜の底」という表現がすごいと思います。私が想像できないような言葉の選び方です。そして「白くなった」です。目の前に雪一面の山々が想像できるような、すばらしい書き方だと思います。「夜の底が白くなった」は直前の文章を引き継ぎながら、その景色を、読む人が頭に浮かべやすい内容になっています。そこが私がすごいと思った理由です。
三つ目はその「わかりやすさ」です。
なにも難しい言葉を使っていないところです。しいて言えば「国境」がわかりづらいかもしれませんが、それだって漢字を見ればだいたいの意味はわかります。
このように易しい言葉だけで、美しくてわかりやすい表現を創りだしているところが、私はすごいと思いました。
以上の三つが、私が『雪国』の書き出しを読んですごいな、と思ったところです。
書き出しからびっくりして、それについて理由を説明するだけで原稿用紙が埋まってしまったことにもびっくりしています。
(56行,原稿用紙2枚と16行)