池井戸潤『下町ロケット』読書感想文|夢と熱意と仕事とロケット

※引用はすべて池井戸潤『下町ロケット』小学館による

あらすじ

 佃(つくだ)製作所の社長・佃航平(つくだ・こうへい)は宇宙飛行士になるのが夢だった。
 製作所は突然取引先から取引終了の通知を受ける。銀行からの融資も断られてしまった。さらにライバル・ナカシマ工業からは特許侵害で訴えられる。
 資金不足による倒産か、と思った矢先に舞い込んできたのは、大企業がロケットのために佃製作所の持つある特許を売ってくれないかという話であった。

 

 

名言・心に残った表現

 

「おめでとうございます。――正義は我らにあり」
(157頁)

 

夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない。
(338頁)

 

「信じよう、オレたちの技術をさ」
(405頁)

 

おまけ

 2015年10月から朝日新聞で『下町ロケット2 ガウディ計画』の連載が始まりました。
 また2015年10月から『下町ロケット』の連続テレビドラマが始まります。
 テレビドラマは前半が『下町ロケット』、後半が『下町ロケット2』の内容とのこと。
 新聞連載とドラマ放映が同時進行するらしいので、それを聞いただけでワクワクしました。

 

【読書感想文】原稿用紙3枚(1200字,60行)

KKc
「夢と熱意と仕事とロケット」

 

 『下町ロケット』は小さな製作所がロケットを飛ばすお話です。
 こう書くと(どうせクライマックスではロケットが飛ぶんだろ? それのどこが面白いんだ?)と思われるかもしれません(私は思いました)。

 

 たしかに『下町ロケット』の最終局面はそのような場面ですが、この作品のすばらしいところはそこではありません。
 結果ではなく過程です。
 そこに『下町ロケット』の魅力はあります。

 

 「お前には夢があるのか? オレにはある」と力強く語る主人公・航平。
 かつてマルクスは「労働のみが人間を表現する」と語りました。
 航平は仕事を通じて宇宙への夢を実現しようとしました。
 宇宙飛行士になれなくても、自分の努力が詰まった部品がロケットとして飛び立ってくれる。
 そのために彼は働いていたといっても過言ではありません。

 

 あなたは何のために働くのか?
 あなたは自分がどんな人間だと証明するために働いているのか?
 そのようなことを『下町ロケット』を読んでいて感じました。そしてできれば私も佃製作所に入社し、ロケット打ち上げに関わりたいとも。
 たぶんそのように思う人が多いからこそ、この小説はベストセラーとして多くの人に読まれることになったのだと私は思います。

 

 『下町ロケット』の男たちはプライドをかけ、一丸となって夢を追い求めます。
 夢を追う物語はいいものです。
 私が好きなマンガ『バクマン。』も、主人公たちは夢を叶えるために仕事をします(ペン・ネームも亜城木「夢叶」だし)。

 

 『下町ロケット』と『バクマン。』の両者に共通しているのは「熱意」です。
 夢を追う人々には熱意があります。
 考えてみれば当たり前ですが、冷め切った気持ちで夢を持つことは不可能です。

 

 夢をかなえるための具体的な努力計画の段階では、冷静に現状と未来を分析することが求められますが、夢のスタート地点においての着火財として、また夢のための行動の燃料として「熱意」は必要不可欠なものです。

 

 まさに夢は、熱意を燃料として空へ飛び立つロケットのようなものです。
 そして読書を通して『下町ロケット』の熱意は私たちに伝播し、私たちの「ロケット」の推進力になるはずです。
 「夢の燃料切れ」になったときにまた読みたい小説でした。

(57行,原稿用紙2枚と17行)

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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