目次
あらすじ
聖路加国際病院は「犬が来る病院」。
病院内での犬、患者、スタッフの取材を通して紡がれた感動のノンフィクション。
【読書感想文】原稿用紙5枚(2000字,100行)
私だけかもしれませんが、QOLという言葉を覚えた瞬間から、そういうことがあるという知識を得た瞬間から、QOLが下がるような気がします。
たぶん『犬が来る病院』で紹介されている子どもたちは、QOLという言葉を知らないでしょう。知らない方がよいこともあります。犬と触れ合うことに「アニマルセラピー」という名前が付いていることを知りながらかわいがるよりも、余計なことを何も考えずに犬を触るほうが楽しいに決まっています。少なくとも私はそうです。
世の中には知らない方がよいこともあります。
たとえばアニメ映画の吹替では、しばしばテレビに出ている人が声を担当します。うっかりしていると「主人公の声は芸人のナントカさんだよ」とか「途中で使われている歌はナニナニちゃんが歌っているのだよ」とか「主題歌はナニガシがオファーを受けて特別に作ったのだよ」とか、そういう情報をキャッチしてしまいます。
私は想像力があまりよくないので、そういうのは知らない方がうれしいです。「ダレダレがやっているのだよ」と聞いてしまうと、アニメのキャラクターの顔の上にその人の顔が浮かんでしまいますし、「あの方が歌っているのですよ」と聞いてしまうと、その方の他の曲と比べたり、余計なことを考えてしまいます。
何かを知らないでいることは、現代の情報化社会を生きる上で時には不利に働くかもしれませんが、私は自分自身の精神の健康が害されてしまうおそれがあるときは、知らないままでいる勇気を持とうと思っています。
病気に対するときにも勇気は必要です。
『犬が来る病院』では、若く幼い方々に難病が降りかかります。
かかってしまったからには「どうして自分が」とか「なんでこんな病気に」とか、そういうことを考えても前には進めません。
本書に紹介されている方々のように、それぞれが納得するように、自分自身の状況とうまく向き合っていくことを選んでいくことが大切だと思います。
<神よ。
変えられないものには、受け入れる心を、
変えるべきものには、それを変える勇気を、
そして、変えられるものと変えるべきものを見極める賢さを、
私にお与えください。>
(ニーバーの祈り)
健康を失ってしまったことは変えられません。元の状態に戻すのはほとんど絶望的な健康状態にあって平穏な心を持てというのは、少し厳しいかもしれません。
でも、たとえ身体の具合を変えられなくても、心の持ちようを変えることはできるかもしれません。
『嫌われる勇気』という本がちょっと前に流行りましたが、変わる勇気も大切です。
「他の人とは違う、特別な経験をした」とか、「毎日にマジ感謝」とか、ポジティブにとらえることも、やりようによっては可能です。そのようにとらえる勇気を持てば、きっとふさぎこんでばかりいるよりは、よい人生が歩めるはずです。
変えるべきことと、変えずにできるだけそのままの状態でいるべきことを判断することは、とても大切です。
たとえば受験シーズンは、日本では冬ですが、主に北の方で雪が降り、受験生も試験する側もたいへん苦労します。こういうことは変わるべきことかもしれませんが、近い将来には変わらないでしょう。
また、日本には桜の季節に花見をする習慣がありますが、これは変わらないことが私は好ましいと思います。
聖路加国際病院は、日本で初めて、小児病棟に「セラピー犬」を導入したところだと書いてありました。
ケアのために犬を使うことは、もっと昔からやられていることかと思っていましたが、意外と歴史が浅くてびっくりしました。衛生的な面とか、訓練の面で、難しい問題だったのでしょうか。
たとえ昔からずっとそのような感じで続いているようなことでも「これは変えたほうがいい」と自分が強く思うようなことは、勇気を持って変えていくべきだと私は思います。
私は想像力も意志力も薄弱なゆえ、特にそんなことはせずに、臆病な勇気を抱えて、知り合いの犬をなでることにします。変わらないことを受け入れる心で。
(94行,原稿用紙4枚と14行)
おわりに
過去に書いた「読書感想文」はこちらから。
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