目次
あらすじ
「ぼく」は魂になった状態で天使に出会う。
「ぼく」は生前に犯した罪により、輪廻転生の輪から外れてしまったが、運良く抽選に当たり、チャンスを得る。
「ぼく」は自殺をしようとした少年の身体に「ホームステイ」し、再度人生を送ることになった。
【読書感想文】原稿用紙3枚(1200字,60行)
<人は自分でも気づかないところで、だれかを救ったり苦しめたりしている。この世があまりにもカラフルだから、ぼくらはいつも迷っている。どれがほんとの色だかわからなくて。どれが自分の色だかわからなくて。>
『カラフル』において「ぼく」は新しい身体(実は自分自身の「お古」の身体なのですが)で、新しい人生を送ることになります。
カメレオンは周囲の景色に同調して体色を変えます。保護色といって、自分に降りかかる危険から身を守るための知恵というか、本能というか、進化の結果です。
カラフルにおける「ぼく」は、カメレオンのように、保護色をまとって人生を再スタートします。彼は家族に絶望し、また受験という困難な壁にぶつかるなど、たいへん悩んだ結果、自らの命を絶つことを選択しました。そんな彼が「復活」し、かつ今度は前向きに生きていくためには、どうしても身を守るための何かが必要だったのだと私は思います。
カメレオンが色を操り安全を確保するように、「ぼく」は「真」という赤の他人(という設定)に乗り移ることで「他人の人生」という「無色」の人生を歩むことになりました。「ぼく」が「真」だと最初に明らかにされないのは、彼が置かれた人間関係を見つめなおすという意味あいの他に(小説的な演出効果もあると思いますが)、「色」を失くすことでもう一度「ぼく」が自殺しないように彼自身の命を守る意味あいもあったと思います。
「きみ、自殺したんだけど、もう一回ちょっと生きてみない?」と言われて「よし! 生きよう!」とやる気が出るかと言われると、私は出ない気がします。そういう意味で天使たちのやり方はうまいやり方だなと思います。
記憶喪失になることで「ぼく」は世界の見方を変えることができました。
でも、その気になれば、私たちも、別に死ななくったって(バカは死ななきゃ直らないと言いますが)、世界の見方を、世界の色や光沢を、自分の色を、自分の生き方や態度を、変えることができると思います。たぶんそれは考えているよりとても簡単だと私は思います。
いろいろうるさいな、と感じる人も、視点を変えれば自分を気にかけてくれているがゆえの行動をしているのかもしれません。
なにも話してくれないな、と思う人も、自分がうまく話題を振れていなかっただけかもしれません。
世界の色は、心の持ちようで容易に変えられる。
それが私が『カラフル』を読んで経験した「色の変化」です。
(59行,原稿用紙2枚と19行)
おわりに
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