※引用はすべて角川文庫による
目次
あらすじ
不倫する奴なんて馬鹿だと思っていた。
ところが僕はその台詞を自分に対して発しなければならなくなる――。
建設会社に勤める渡部は、派遣社員の中西秋葉と不倫の中に落ちた。
2人の仲は急速に深まり、渡部は彼女が抱える複雑な事情を知ることになる。
15年前、父親の愛人が殺される事件が起こり、秋葉はその容疑者とされているのだ。
彼女は真犯人なのか?渡部の心は揺れ動く。
まもなく事件は時効を迎えようとしていた……。
(裏表紙)
渡部は、派遣社員としてやってきた秋葉をバッティングセンターで偶然見かける。
彼は秋葉をカラオケに誘い、そこで泥酔した彼女をアパートまで送っていく。
そのとき渡部の上着を秋葉が汚したことをきっかけにして、2人はプライベートで会う仲になり、一線を越える。
夜明けの街を歩きながら、秋葉との夢のような一夜を何度も頭の中で再生していた。
もし誰かが僕を観察していたなら、さぞかしだらしない顔をしていたことだろう。
(77頁)
そして渡部は秋葉の抱える問題について知ることになる。
15年前に殺された父親の愛人の妹と名乗る人物からこんな言葉を聞く。
「本当に聞きたい?」釘宮真紀子はいった。「本条麗子殺害事件の真犯人は中西秋葉、あなたの愛する恋人だ、という話なのよ」
(234頁)
クライマックスは時効成立の日。そこで渡部はすべてを知ることになる。
夜明けの街に恋は死ぬ。
感想
あらすじを読むとただの不倫小説ではないことがわかる。
『夜明けの街で』は不倫ミステリーである。
渡部の不倫相手・秋葉は魔性の女として描かれている。
「こんなところで一人にしないで」
(69頁)
渡部を落とした一言である。
さらに秋葉はある事情のため、渡部を離婚させたくなかった。
渡部の性格を逆手にとって、あえて積極的にふるまうこともする。
自分には付き合っている人がいる。将来のことも約束した仲で、近々結婚すると思う
(319頁)
と発言する。
秋葉の策略によって、渡部はいいように操られていく。そこもまた見どころだ。
ところで『夜明けの街で』は本編の後に『おまけ 新谷君の話』が付属している。
新谷君とは、渡部の親友で、渡部の不倫の相談相手である。
彼は相当親身になって渡部のために動いてくれる。
本編ではその理由は明かされなかったが、『おまけ 新谷君の話』で判明する。
名言
旦那さんが浮気したら?
彼女の答えは明瞭だった。 「殺します」
(11頁)
土下座は贖罪のスタートにすぎない
(130頁)
「サスペンスドラマの登場人物が揃ったみたい」秋葉は立ち上がった。
(348頁)
おわりに
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