目次
あらすじ
ハーレムで黒人が書いた黒人の本だけを売る書店を作った男の生涯。
人種差別と闘い、熱く生きたルイス・ミショー。
エネルギッシュな人生を描く(ノン)フィクション。
【読書感想文】原稿用紙5枚(2000字,100行)
アメリカの地理に全然詳しくないので「ハーレム」と聞いて、女性がいっぱいいるところを想像しました。そのようなところで「闘う」本屋さんとは……ルイス・ミショーって、女性の教育のためにがんばった人なのかな、と思いました。違いました。
ハーレムとは、ニューヨークにある地名のことで、私がイメージしたものとはそもそも言語、スペルから違うし(女性に関するハーレムはトルコ語)、まったく関係ありませんでした(カタカナで外来語を表現するときはこのような誤解が生まれる可能性がある)。
ルイス・ミショーは、著者が黒人かつ黒人のことを扱った本だけを売る書店をハーレムに開きます。
1939年「ナショナル・メモリアル・アフリカン・ブックストア」の開店です。彼はそれから40年あまりにわたり書物を通じて「闘い」、黒人社会に多大な貢献の足跡を残しました。
<教会はナット・ターナーやダグラスのような人たちが黒人の団結のための集会を開くことができる唯一の場所だった。しかし白人は黒人たちに、天国での来世のことを教えたがった。黒人たちの目をこの世の問題から背けさせようとしたのだ。そうすれば、だれに頭を蹴られているのか気づかないと考えたのだろう。>
黒人が差別され、虐げられている現状を変えるには、彼ら皆が知識をつけなければならないとルイス・ミショーは考えました。
自分たちの歴史、具体的には今まで誰に何をされ、そして祖先がどう行動してきたのかを知ることは、未来の、自分たちのこれからの行動を革新するうえで非常に重要であると、彼は確信していました。私もこの考えに賛成です。
<過去に目を閉ざすものは未来に対して盲目となる>
私たちが過去のこと、歴史を学ぶのは、将来の問題について考えるためのヒントになるからです。年号や事件名を覚えることで暗記力を高めるためだとか、オタク心を満足させるためでは決してありません。
どんな天才でも、ゼロから何かを考えることはできません。
振り返ってみればわかるように、私たちは思考するときには、自分の知っている物事と結びつけて考えています。
私は本書のタイトルを初めて見たときに「女性ばかりの状況」を想像しました。ついでに申し上げると、「ルイス」という名前から北海道名物のチョコレートを思い浮かべました(あっちはロイズですけど)。
思考は知識(経験)に裏打ちされた行動です。
だから知識を得るということは、考える力を養うことになります。文字を読み、本を読み、そして、学んだことを基に仲間と議論を交わす。そのような繰り返しで人間は成長していきます。
ルイス・ミショーの作った本屋は、黒人たちの学びの場となりました。そこではただ本が売られているだけではなく、貧しい者には図書館として機能し、伝えたいこと、訴えたいこと、どうしても言わねばならないことがある者のためには演説台として機能し、意見を交わしたい者のためにはサロンとして機能しました。
彼の遺した場所は黒人社会にとって偉大な役割を果たしました。彼の人生は原題”no crystal stair”にあるように、水晶の階段のようなキレイな、整った、波乱のないものではありませんでしたが、後世にずっと語り継ぐべき、すばらしいものだと私は思います。
<あんたたちはいつだって、『わたしたち』になにができるか、というが、それじゃあだめだ。大事なのは、1人の人間として、『きみ』がなにをするかだ>
何かを知ることは、とりわけ自分たちを知ることは、私たちにとって大きな助けになる。読書によって私たちは力強く人生を送ることができる。
『ハーレムの闘う本屋』を読んで得た知識は、これから先きっと、私が「なにをするか」を選ぶうえで助けになるだろうと期待しています。
(89行,原稿用紙4枚と9行)
おわりに
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