目次
あらすじ
主人公は小学5年生の女の子・日都子(ひとこ)。
彼女のクラスで飼育していた金魚がある日、死んでいた。
クラスメイトは、飼育係である彼女が故意に殺したと疑う。
そこから始まる壮絶ないじめ。
日都子は決意した。
「みんな」には属さない「ヒトリコ」になることを。
<もしかしたら金魚はきっかけでしかなくて、自分はずっと前からみんなに嫌われていたのかもしれない>
青春とは爽やかだけではない、残酷さも兼ね合わせている。
孤独に生きることを選択した少女は、どう成長していくのか。その先に希望の光は見えるのか?
第16回小学館文庫小説賞の、新しい青春小説。
感想
<関わらなくていい人と関わりたくない>と孤独を深めていく日都子(ヒトリコ)が主人公である。
そもそもの疑問なのだが、「関らなくていい人」というのは、事前にわかるのだろうか。
人間には、そのような「事前になにかを察知できる能力」が備わっているのだろうか。
他人と関らないでいることは、関わることによるメリットを殺してはいないだろうか。
でも、ヒトリコは誰かと関わることによるデメリットを知ってしまった。傷ついてしまった。
その痛みをあまりにも鮮明に覚えているがゆえに、彼女は誰かと必要以上に関わることをやめた。その「必要」ですらも最小限にとどめ生きてゆくことを選択した。
彼女はとても強い。
「ヒトリコ」として生きてゆくことは誰とも関わらない=誰の援助も頼りにしないで生きてゆくということだから。
衆寡敵せず。
ヒトリコは誰とも戦わないことを選ぶことで、誰にも負けない(それゆえ傷つかない)ことに成功した。
そうせざるをえなかったのだけれど。
とはいえ(「ヒトリコ」と自称しているとはいえ)、彼女にも味方(のような人)がいないわけではない。キュー婆ちゃんや冬希君とか。
たぶん人は完全に独りで生きていくのは不可能である。
彼女は数少ない「味方」とコミュニケートすることで、「他人と関わることも悪くない」と気づけたはずだ。
その方が人生は楽しい。
愛と海のあるところに、怪獣だって行きたいのだから。
おわりに
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