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嫌われる。あえてね。
アドラーはフロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される。
アドラーによると、すべての悩みは対人関係の悩みに帰結する。
対人関係を考えるうえでまず省みるべきは、自分に何か改善の余地があるのではないか、である。人生すなわち自らの生を決定していくのは、他ならぬ自分だ。したがって自身が直面する問題に対する答えも、自分で探し出し、その手で導き出していくべきものである。最初から他者に頼ってはいけない。
自身を振り返り、それでもなお「あちらが間違っている」と断言できるのであれば、それを指摘するべきである。
ただし、決して感情的になってはいけない。感情に任せて放たれた言葉が他者を動かすことは稀である。論理的に説得を試みるのが一番の近道だ。
もしそれがビジネスシーンでのトラブルであれば、対人関係を改善することのハードルはとても低い。一緒に仕事をするということには「利潤の獲得」という共通の目的がある。その目的を共有しているため、パーソナルな関係よりも往々にして、関係の良化がされやすい。
さて、関係が改善されたとしても嫌われるということもある。関係が修復したような状態にありながらも、水面下では嫌われているという状態もまた、人生でしばしば起こりうる。
嫌われることは苦しい。嫌われるということは、他者に嫌悪感を抱かれていることを知るということは、私たちの精神を大きく損なう。できれば嫌われずに生きていたいと誰もが願う。
しかしアドラーの重視する「自分の生き方を貫くこと」を実践していくためには、多少は誰かに嫌われることを覚悟しなければならない。嫌われることを恐れずに、自分の人生を選択していく。本書が鼓舞するのはそのような「嫌われる勇気」である。
別に「嫌われる」こともそんなに悪くはないと私は思う。「憎さ余ってかわいさ百倍」とも言うことだし(言わないけど)。
(790字)
作品情報
著者:岸見一郎 古賀史健