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その病気、診断(推理)します
主人公は頭脳明晰・博覧強記の天才女医、天久鷹央。
たぶん初見では読めないでしょう。「あめく・たかお」です。「たかお先生」と現実で呼ぶのを聞いたら、きっと「高尾」先生とか「孝雄」先生だとカンチガイすることうけあいです。
舞台は天医会総合病院・統括診断部。ここには各診療科で「診断できません」の烙印を押された「患者」が集められる。
鷹央は統括診断部の部長かつ副院長。若い。そして「探偵」の特徴をふんだんに持っている。
異常な記憶力と集中力と演算能力、人付き合いがあまり上手ではなく、その場に不適切な発言をしてしまうこともある。観察力に優れ、わずかな変化も見逃さない(ホームズみたいだ)。
そりゃ「探偵」がぼーっとしてて、犯人とか手がかりとかを無残に見逃す……なんて話はたぶん成り立たない。
少なくとも私は寡聞にして知らない。もしあったら読んでみたいけど。
でもそんなの、読むとしても一冊で充分だ。
私たちは頭が良い「探偵」の筋道立った美しい論理を読みたい(聴きたい)のであって、偶然・出来すぎたご都合主義で物事を処理していく「ラッキーマン」を見たいわけではない(……とここまで書いてきたが、やっぱり読みたいかも。蛇足だがガモウひろし『とっても!ラッキーマン』は好きだ)。
脱線したので修正(強引だな)。
とにかく『天久鷹央の推理カルテ』は医療ミステリーである。けっこう軽めな。医療の専門用語がたくさん出てくるけれど、説明がちゃんとあるので難しいわけではない。
問題は鷹央のキャラクターが合うかどうか。こういう人物がニガテというか、食傷気味な人はきっといるはずなので。
お気に召したら次作『天久鷹央の推理カルテⅡ ファントムの病棟』をどうぞ。
(731字)
作品情報
著者:知念実希人
イラスト:いとうのいぢ