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大団円で大縁談
大安吉日は、万事においてよろしいとされる日。今日では、結婚式などに良い日とされる(広辞苑第五版より)。
『本日は大安なり』は老舗ホテルの結婚式場で繰り広げられる物語。
新婦はちょっと「ややこしい」女だ。新郎を試すため、そっくりの双子の姉と入れ替わる。
こういうことをすると、男性諸君は(ややこしい女だ)と思ってしまうだろう。
でも女性にとってはごく自然な試みなのである。
女性は男性からの気持ちを(見た目だけではないか)と考えたり、(私の中身をもっと見てほしい)と思ったりしている(たぶん)。
だから、結婚式という「しっかりとした日」(こんな日に「偽者」が自分の隣に並ぶわけがはない、と彼は思っている)に彼の「気持ち」を試してみたいという心情は理解できるものだ。
そんな「試練」を仕掛けられる新郎も新郎で。
実は彼は既婚者なのだが、それを言い出せぬまま結婚式当日へ(そんなことってありえるのか?)。
まぁ『本日は大安なり』のタイトルどおり、結末は大団円(ハッピーエンド)なので安心して読むことができる(なにが安心してなんだ)。
そうそう。
「大団円」は、「大円団」と間違って使われる方がいらっしゃいますけど、なぜでしょう。
たとえば私のパソコンでは「だいえんだん」と打つと「大縁談」と返してきます。ということは「大円団」と表示させるためには「だい」、「えん」、「だん」とひと文字ずつ入力する必要があると予想されます。手間がかかっていますね(誤字だけど)。
あ、でも……
『本日は大安なり』に限っていえば、結婚に関する話なので、わざと「大円団」と「縁談」とかけて表記するのもありかもしれない。
「では、これにて! 大・円・団~!」みたいな。
……今のなしで。
(745字)
作品情報
著者:辻村深月
情報:2012年にドラマ化