伊坂幸太郎『死神の精度』感想

※引用はすべて文藝春秋による

あらすじ

「俺は、晴れを見た例しがないんだ」
(213頁)

 

 『死神の精度』の主人公はミュージック好きの死神・千葉。
 彼はいわゆる雨男である。「仕事」をするとき必ず天気が悪くなる。

 

KKc
 死神の仕事とは、人間の生死を決めること。

 千葉は7日間の調査の後に「可」すなわち予定日に死ぬ、か「見送り」すなわちまだ生かしておくかを判断する。

 

 千葉はどこまでもクールで、調査対象の人間に共感しないし、寄り添いもしない。
 しかし物語は温かく、面白い。
 『死神の精度』は短編集だが、どれを読んでも楽しめると思う。

 

収録短編

1.死神の精度

 クレーム処理に悩むOL。コインの表と裏で運命を決める。

2.死神と藤田

 ヤクザ・藤田が仁義を通す。

3.吹雪に死神

 吹雪による密室推理もの。アリバイと死因は?

4.恋愛で死神

 片想いの結末は?

5.旅路を死神

 十和田湖、奥入瀬へGO!!

6.死神対老女

 「あなた、人間?」と死神の気配を察する老女。

 

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名言

 全体を通して死神・千葉の発言はどこかズレていて面白い。

KKc
 たぶん人間界に慣れていないため?

 

「何かするたびに、天気が雪になる男のことか?」
(29頁)

 

「年貢制度は今もあるのか?」
(44頁)

 

「人が生きているうちの大半は、
人生じゃなくて、ただの時間、だ」
(174頁)

 

「でもね、昔何かの映画で言ってたけど、
ちょっとした微妙な嘘は、誤りに近いんだってば」
(274頁)