東野圭吾『ガリレオの苦悩』感想

※引用は一部を除いて東野圭吾『予知夢』文春文庫による

あらすじ

”悪魔の手”と名のる人物から、警視庁に送りつけられた怪文書。

そこには、連続殺人の犯行予告と、帝都大学准教授・湯川学を名指しで挑発する文面が記されていた。

湯川を標的とする犯人の狙いは何か?

常識を超えた恐るべき殺人方法とは?

邪悪な犯罪者と天才物理学者の対決を圧倒的スケールで描く、大人気シリーズ第四弾。

(裏表紙)

 

 

 ガリレオシリーズ四作目の今作も、定番である短篇集のかたちをとる。

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大まかなあらすじは以下の通り。
第一章 落下る おちる 飛び降り自殺死体に殴られた跡。他殺の疑いが浮上。
第二章 操縦る あやつる 湯川の恩師の自宅が火災。息子が死亡。胸に刺し傷あり。
第三章 密室る とじる 湯川の旧友のペンションに泊まった人物が密室を残して死亡。
第四章 指標る しめす ダウジングをする少女が殺人事件のカギを握る。
第五章 攪乱す みだす 「悪魔の手」と名のる科学者が湯川を巻き込み連続殺人をする。

 

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 ※以下ネタバレを含みます。

 

ネタバレ

 

 文春文庫の裏表紙には2つの謎が示されている。

 ①湯川を標的とする犯人の狙いは何か?

 ②常識を超えた恐るべき殺人方法とは?

 どちらも「第五章 攪乱す みだす」に関するものである。

 そしてタイトルにも謎がある。

 ③「ガリレオの苦悩」とは?

 これは「第二章 操縦る あやつる」に関するものだ。

 この3つの謎のネタバレを提示しよう。

 

①湯川を標的とする犯人の狙いは何か?

 

 連続殺人犯が湯川を名指しで事件に巻き込んだのは、逆恨みが原因である。

 彼は大学院生のとき、ある学会で湯川に投げかけられた質問に傷ついた。

 そのことを引きずったまま入りたくもない会社に就職し、そこを辞職し、さらに同棲していた女にも振られた。

 彼は錯乱し、女を殺した。そして「湯川にも歯が立たない事件を起こしてやろう」と思い立った。

 ガリレオにも解決できない事件を起こすことで自分の人生を台無しにした男へ復讐しようとしたのである。

 

②常識を超えた恐るべき殺人方法とは?

 

 音で運転手の平衡感覚を狂わせ、交通事故を起こさせるというもの。

 犯人は標的の車と併走しながら、スピーカーで被害者に音波を送った。

 

③「ガリレオの苦悩」とは?

 

 「第二章 操縦る あやつる」の犯人は湯川の恩師だった。

 湯川は恩師に自首をすすめるが、彼はしらを切りとおす。

 

「それはできないな。私は息子を殺してなどいない。犯人は、私以外の誰かだ。日本刀を持った誰かだ」

「先生……」

「すまないが、帰ってくれ。君の妄想を聞いている暇はない」

(147頁)

 

 苦悩の末、湯川は警察に全てを話す。

 しかし事件には情状酌量の余地があった。

 恩師が刑期を終えた後は、湯川ら弟子たちが助けになることを申し出た。

 そうすることで「ガリレオの苦悩」は終わりを告げた。

 

感想

 

 ガリレオシリーズも四作目なので、以前の作品との関連もそろそろ出てくる頃だと思っていた。

 湯川の結婚観に関するエピソードが二作目『予知夢』とリンクしている。

 

「こいつは昔からよくいっていた。早く結婚して後悔している人間と、遅く結婚して後悔している人間では、どちらのほうが多いかってね。

(192頁)

 これは湯川の旧友・藤村が彼について語る言葉だ。 ちなみに『予知夢』では湯川は学生結婚に反対する理由としてこんなことを言っている。

「早く結婚して後悔している人間と、もっと早く結婚すればよかったと後悔している人間では、どちらのほうが多いかという問題だ」

(東野圭吾『予知夢』文春文庫,177頁)

 

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過去作との関連は、シリーズを読み続けている読者にとって嬉しいものです。

 

<関連リンク>

感情は世界を動かせないが、人は動かせる|東野圭吾『予知夢』

 

名言

 

「そばにいるからこそ、余計に電話をかけたくなるものです。女とはそういうものです」

(35頁)

 

水は百度で水蒸気になるという常識を確信していると、大やけどをする

(59頁)

 

優秀な研究者に必要な資質とは何だと思う?

(100頁)

 

殺されたというんです」 「誰に?」

薫は唇を舐めた。 「湯川先生に、です」

(369頁)

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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