※引用はすべて講談社の単行本『掟上今日子の備忘録』による
目次
あらすじ
掟上今日子(おきてがみ・きょうこ)は記憶が一日しか保たない。
したがってどんな事件も一日で解決する「最速」の名探偵である。
予約は一切受け付けないし、秘密も絶対に守られる。
名言・心に残った表現~感想を添えて~
「た――探偵を呼ばせてください!」
(12頁「初めまして、今日子さん」)
「冤罪体質」隠館厄介(かくしだて・やくすけ)のセリフ。彼は機密データの漏洩に関わったと疑われ、その容疑を晴らすため掟上今日子に捜査を依頼する。
『私に殺意を持つ犯人と共に旅行するほうが、私に好意的な名探偵と旅行するよりいくらか安全だ』
(12頁「初めまして、今日子さん」)
確かに。コナン君や金田一君と一緒のホテルとかにはなりたくないですね。
「ゆめゆめ忘れません。大丈夫です、私、記憶力はいいほうなんです――一日以内でしたら」
(27頁「初めまして、今日子さん」)
掟上今日子はこんなジョークも言う。
「物を隠すときには、人はついつい見つけやすい場所に隠しちゃうんですよね」
(41頁「初めまして、今日子さん」)
掟上今日子が探し物をしているときのセリフ。
これを読んでエドガー・アラン・ポー『盗まれた手紙』を思い出した。
もしかしたら西尾維新は『盗まれた手紙』を意識して書いたのかもしれない。
探偵の名前が掟上、すなわち置「手紙」だからだ。
『私は掟上今日子。25歳。置手紙探偵事務所所長。白髪、眼鏡。記憶が一日ごとにリセットされる』
(53頁「初めまして、今日子さん」)
掟上今日子の左腕にマジックで書かれた文章。
彼女は目覚めるたびにこれを読んでアイデンティティーを確認している。
隠館さん。私が一秒で、あなたの疑いを晴らし、この事件を解決してさしあげます。
(61頁「初めまして、今日子さん」)
掟上今日子による「最速」宣言。
実際にこの後「一秒で」事件を解決している。有言実行がかっこいい。
今日子さんには失われた設定がある――それは海外にあるのかもしれないし、まったく別の場所にあるのかもしれない。
(141頁「紹介します、今日子さん」)
掟上今日子の設定はここでは明らかにされない。
もしかしたら続編で彼女の過去をしる人物が現われるかもしれないが、現時点では謎のままだ。
ミステリー小説で大切なのは探偵の謎の解き明かすことではなく、探偵が謎を解き明かすことである。
「本に埋もれて死ねるなら本望じゃないですか」
(179頁「お暇ですか、今日子さん」)
掟上今日子が作家・須永昼兵衛の書斎を訪れたときのセリフ。
自然に言葉遊びのような発言になっている。西尾維新らしい。
そう言えば僕は今日子さんが同じ服を着ているところを見たことがない。この人は服を無限に持っているのだろうか?
(222頁「失礼します、今日子さん」)
記憶が起きている間、一日しか持続しないことと何か関係があるのかなと思った。
それとも目覚めてからの時間を貴重に使うために、一度着た服は捨て(洗濯をしない)ているのだろうか?
でもその後(285頁「さようなら、今日子さん」)にドラム式洗濯機が出てきているし……。
さようなら、今日子さん。
(303頁「さようなら、今日子さん」)
副題と同じ、隠館の言葉。
「それがわかるんですよ。私は脱衣所でこのリストを見て、一秒で気付きました」
(331頁「さようなら、今日子さん」)
最速の探偵ふたたび。このセリフほんとうにかっこいいですね。
おわりに
ラストシーンが次回作への期待を抱かせるようになっている。さすが西尾維新。あとがきも西尾維新らしく、ずらずらと並べられた文章が小気味良いです。
第二作『掟上今日子の推薦文』も楽しみになりました。
おわりに
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