目次
あらすじ
「彼女」はすでに死んでいる。「僕」は葬儀にも行かずに彼女から借りた本を読む。
携帯電話を取り出しメールを眺める。最後の送信メールは「君の膵臓を食べたい」。
彼女はこのメールを読んだだろうか。
登場人物
山内桜良(やまうちさくら)
膵臓の病気にかかり、あとわずかの命。
うわははっと豪快に笑う。
「僕」
本が好き。いちばん好きな作家は太宰治。わらびもちも好き。
恭子(きょうこ)
桜良の親友。「僕」に威圧的な態度をとる。
ガムをすすめてくる男
いいやつ。
『君の膵臓をたべたい』をおすすめする7つの理由
すみません。タイトルには「膵臓が食べたくなる」と書きましたが、あれは字面どおりの意味ではなくて「この小説が読みたくなる」という意味です。
ふつうに小説をおすすめするページになっております。
- タイトルが魅力的
- 笑えるし泣ける、せつなくて胸キュン
- わくわくするような文章がたくさんある
- 会話が楽しい
- すごい
- 主人公への呼び名がおもしろい
- 「君の膵臓をたべたい」
たぶん以下の紹介文を読んでも膵臓を食べたくはならないと思います(きっと)。
安心して(?)お読みください。
1.タイトルが魅力的
住野よるデビュー作の小説のタイトルは『君の膵臓をたべたい』。
初めて聴いたとき(ホラー小説か!?)とドキッとしました。
かわいらしい表紙が「ひっかけ」なのではないかと疑いました。
でも、読み始めるとそれはカンチガイだったことがわかりました。『君の膵臓をたべたい』は青春恋愛小説です。それもとても上等な。
それにしても、こんなに(読みたい)と思わせるタイトルをつけるなんて、すごいと思います。
そしてそんな魅力的なタイトルをつけた作家が書く小説が魅力的でないはずがありません。
2.笑えるし泣ける。せつなくて胸キュン
たぶん私の文章よりも、引用したほうが雰囲気が伝わると思うので引用します。
「ねえ、君はさ」
「うん? どうしたの?」
「本当に死ぬの?」
(65頁)
「私が死んだからって、私以外の女に手を出したら許さないわよ!」
「ごめんね、君とは遊びなんだ」
うわははっと、彼女はいつもの豪快な笑い方をした。
(67頁)
私はこれらの場面が好きです。
3.わくわくするような文章がたくさんある
その時、異常が始まろうとしていたことに気がついていなかったのは、僕が望むと望まずにかかわらず、登場人物だったからだろう。小説でも、第一章がどこの場面かと知ることができるのは読者だけだ。登場人物は何も知らない。
(75頁)
「せっかくお酒飲んでるし、いきおいで『真実か挑戦』ゲームでもやろうよ」
(110頁)
そこから僕は、彼女と人生で始めての経験をした。人との関わりの乏しい僕にはそれがなんなのか分らなかった。
(169頁)
横に、ライオンが立っていた。
(183頁)
4.会話が楽しい
会話が楽しい小説はよい小説です。
これもちょっと引用します。
「どこに行くの?」
僕が訊くと、目を細めて空を仰いでいた彼女は躍るように言った。
「パラダイスだよ」
楽園、そんな場所が高校生の女の子から命を奪うこんな世界にあるのだろうかと、僕は不思議に思った。
(52頁)
「運動部にいたことは?」
「ないよ。ほら、高貴な生まれだから体を動かさなくてもいいんだ」
(86頁)
全編を通してこんな感じの掛け合いが続きます。とても楽しい読書です。
5.すごい
この小説はすごいです。
何がすごいって読んだあと絶対に(読んでよかった)と思えるからです。
特に214,215頁の見開きがすごいです。
『君の膵臓をたべたい』を読むときは、ここを読むまで本を閉じないで欲しいです。
6.主人公への呼び名がおもしろい
『君の膵臓をたべたい』は「僕」の一人称で書かれています。
「僕」の名前は最後まで明かされません。
誰かが「僕」の名前を呼ぶときは以下のように書かれます。
- 【秘密を知ってるクラスメイト】
- 【大人しい生徒】
- 【地味なクラスメイト】
- 【仲のいいクラスメイト】
- 【根暗そうなクラスメイト】
- 【仲良し】
- 【親友と不可解な関係のクラスメイト】
- 【噂されてるクラスメイト】
- 【ひどいクラスメイト】
- 【目立たないクラスメイト】
- 【許せない相手】
- 【ひどいクラスメイト】
- 【?????】
どうしてこのように書かれているのかも、『君の膵臓をたべたい』を読むとわかります。
7.「君の膵臓を食べたい」
この言葉の重みを知ったとき、きっと涙することになります。
そこにはさまざまな意味が込められていて、それを理解したとき(あぁ、そうだったのか)と思います。
名言
「君の膵臓を食べたい」
(6頁)
一日の価値は全部一緒なんだから、何をしたかの差なんかで私の今日の価値は変わらない。私は今日、楽しかったよ。
(13頁)
「膵臓は君が食べてもいいよ」
(28頁)
「小学生くらいからかな、僕には友達っていうのがいた記憶がない」
「…………記憶喪失?」
(39頁)
神様が最初からタグ付けしといてくれればいいのにね。
(41頁)
死ぬまで仲良くしてね!
(45頁)
「死に直面してよかったことといえば、それだね。毎日、生きてるって思って生きるようになった」
(56頁)
「自分自身を見つめるくらいなら、私を見つめてよ」
(79頁)
おまけ
よくあるまちがい
- 君の膵臓を食べたい
- 君の膵臓が食べたい
- きみの膵臓をたべたい
- 私の膵臓を食べてください
- ぼくは膵臓をたべる
- 私の膵臓たべて
- あなたの膵臓を食べたい
- 膵臓を食べる
- 君のを食べたい
- 彼女の膵臓が食べたい
- 僕わあなたの膵臓を食べたい
- すい臓が食べたい
- 私の肝臓を食べたい
- 誰か私に膵臓をください
お気持ちはなんとなくわかります。
読書感想文を書きました(2%くらいネタバレあり)
https://bookloid.com/suitai-readfeelings/
おわりに
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