目次
あらすじ
神父・オルガンティノは日本にキリスト教を広めることは難しいではないかと思い始める。
ある日彼が祈りを捧げていると、日本の神々の幻影を見た。
後日「日本の霊の一人」と名乗る老人にオルガンティノは「日本人の力」を教わる。
それは海外の文化を「造り変える力」だという。
老人は「デウスも必ず勝つとは限らない」と言い残して消えた。
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【読書感想文】原稿用紙3枚程度(1200字,60行)
『神々の微笑』のなかで神父・オルガンティノは「天の岩戸が開く瞬間」を見ます。ご存知ない方のために簡単に申し上げますと、「天の岩戸が開く瞬間」とは日本の昔話のワンシーンです。
僕の知る限り日本でいちばんすごい神様である「天照大神(アマテラスオオミカミ)」がある時へそを曲げて「天の岩戸」という洞窟の中に閉じこもってしまいました。彼女は太陽の神なので、いなくなると世界は闇に包まれました。さぁこれは大変だと他の神様たちはあの手この手で外に出てこさせようとします。
詳しい方法は省略しますけど、『神々の微笑』にあるようにニワトリをいっぱい連れてきたり、踊りのうまい神様がその場を盛り上げたりしたようです。そして天照大神が気になって「何かな?」とちょっと覗いたところを力持ちの神様がぐいっと入り口を開けて、彼女はめでたく連れ出されたというわけです。これが「天の岩戸が開く瞬間」です。オルガンティノが見たものはもちろん幻影ですが、彼は倒れてしまいました。太陽の神様を正面から見たらそれはきっとすごいショックだろうと思います。というか、よく失明しなかったなあと私は思いました。デウスが守ってくれたのでしょうか。
さて、オルガンティノはその後「ある霊のうちの一人」とお話をします。日本には「八百万の神」がおられるとよく言います。ここで登場した老人も、その八百万いる神様のうちの一人なのでしょう(ちなみに神様を数えるときは「柱」だった気がするので正確には「一柱」といったほうが良いでしょうが)。その神様は『神々の嘲笑』の中でいちばん大切なことを言っていると私は思います。「我々の力というのは、破壊する力ではありません。造り変える力なのです」と。
ここでいう「我々」とは日本人のことだと私は解釈しました。老人は仏教や漢字、書道などを例に挙げ、日本人は海外の文化を造り変える特徴があると述べます。そしてキリスト教もいずれそうなるだろうと予言します。オルガンティノは「しかしデウスは勝つはずです」と反論します。ここで物語は終わりです。
私は『神々の微笑』で描かれているのは日本人の特質だと思いました。日本人はある文化が入ってきたときに、それを吸収し再構築することがかなり得意だということです。たとえば漢字は中国から伝わって、カタカナとひらがなに変換されました。
これはけっこう私たち自身のことを考えるときに有用であると思います。たとえば勉強やスポーツなどでも、日本人は教えられたことをそのまま受け入れるだけではなく、それを自分なりにかみ砕いて理解することが得意であるといえそうです。このことは日本語で書かれた勉強法などの本によく「秘訣」として書いてありますけど、ひょっとしたら海外の本にはけっこうレアな記述なんじゃないかな、と思いました。
(62行,原稿用紙3枚と2行)