目次
あらすじ
ナチスによるユダヤ人の大虐殺。
シンドラーはそんな「最悪な状況」下で、ユダヤ人を助けるという「最善のこと」をなしつづけた。
著者・レオンは「シンドラーのリスト」に名前が載ることで生き延びた。
生き証人による真実の回想録。
【読書感想文】原稿用紙5枚(2000字,100行)
第二次世界大戦においてナチスは軍を率いてポーランドに侵攻しました。それはユダヤ人にとって長く続く「地獄の日々」のはじまりでした。
ナチス支配下の地域では「民族を浄化する」という名目で、ユダヤ人の大虐殺が行われました。収容所に送られたユダヤ人の運命は「死」でほとんど固定されており、そでは一切の希望が絶たれていました。
家族や親友、恋人といえども、ユダヤ人であるというだけで、彼らの絆は引き裂かれ、生と死の境に強制的に立たされます。恐怖に震える毎日であったことと想像します。
正気を失った帝国に捕らえられてしまえば、人間の命などとるにたらない。人間の命が、さながら小さな虫の如く扱われてしまう。
レオン少年は幸運にも「シンドラーのリスト」に載ることで一命を取り留めましたが、彼の背後にはその何十倍、何百倍もの「助からなかった」ユダヤ人がいることを私たちは忘れてはなりません。
レオン少年は終戦後、アメリカへ移住しています。19歳のときです。悲惨な記憶の堆積したヨーロッパに留まることは、彼にとって困難のことでした。
彼は教師になり、後に自身の体験を綴った本を出版します。ホロコーストを生き延びた一人としての使命感がそうさせたのだと私は思います。
彼が語り口として選択したのは、シンドラーを軸とした物語でした。「最悪な状況」において信念を持って正しい行いをした人物のことが、ずっと心の中心にあったのだろうと思います。まさにシンドラーはレオン少年にとっての「英雄」です。
<英雄とは、最悪の状況で最善をなす、ごく平凡な人間のことである>
収容所に詰め込まれた人を救うには「最善」のことを行わなければなりません。ただその「最善」のことをなすには、私たちは特別である必要はありません。シンドラーは人より少しだけ財産のあった実業家で、たぶんほとんどの人と同じく「平凡」な人間であったと私はなんとなく思っています。
そんな彼がナチスの支配下にあったドイツにおいてユダヤ人を救うという「偉業」を成しとげられたのはなぜでしょうか。一歩間違えれば自らの身も危うくなってしまうようなことができたのは、なぜか。
シンドラーの本心を完全に知ることはできませんが、私は彼がそのように行動できたのは「よく考えた」からだと思います。
普通に生きていても、私たちは簡単に周りに流されてしまいます。無意識のうちに流行を追い、世間と同じように思考し、行動してしまいます。それが第二次世界大戦下のナチス政権下であれば、なおさらそうなってしまう可能性は高いと私は考えます。
でもきっと、シンドラーは考えて、よく考えて、考え続けて考え抜いたからこそ、「ユダヤ人を助けることが最善である」と結論を出し、行動に移すことができたのだと私は思います。
考えることは脳みそを持った人間なら誰でもできます。だから、彼が特に人より優れている点があったとしたら、それはほんの少しだけ考える時間が長く、そして思考が深かったからだと私は思います。
ユダヤ人がどれだけ恐怖に震えているか、どれだけ空腹と飢えに苦しんでいるか、だれだけ人間の尊厳を損なわれ続けているか。
どれだけ「幸せに生きたい」と希求しているか。
人間の命があまりにも軽く扱われている状況は、よく考えれば、ほんとうによく考えれば誰でも「異常だ」と思うことだろうと思います。でもたぶん、当時はそれが難しかった。
そのような思想に至った上でさらにアクションを起こしたシンドラーは、本書で強調されているように「英雄」と呼ばれるにふさわしい人物だと思います。
(85行,原稿用紙4枚と5行)
おわりに
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