※引用はすべて夏目漱石『坊っちゃん』青空文庫による
あらすじ
「坊っちゃん」は兄からもらった600円を学費にあて、数学教師になるための学校へ行く。
卒業後、四国へ行かないかと問われ即答する。
赴任した学校では、親譲りの無鉄砲さを発揮し、縦横無尽に暴れまわった。
読書感想文
原稿用紙3枚(1200字,60行)
夏目漱石『坊っちゃん』といえば、冒頭の一文が有名です。
<親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。>
私から見ると「損ばかりしている」ようには思われないのですが、思うか思わないのかは本人の問題なので、私としては(そんなふうに自分を見ているのか)と思うくらいです。
それはともかく、坊っちゃんの性格としての「無鉄砲」は、読んでいてとても面白く感じました。
<下女がどちらからおいでになりましたと聞くから、東京から来たと答えた。すると東京はよい所でございましょうと云ったから当り前だと答えてやった。>
<強者の権利と宿直とは別問題だ。>
<噓を吐いて罰を逃げるくらいなら、始めからいたずらなんかやるものか。>
<ここのうちは、いか銀よりも鄭寧で、親切で、しかも上品だが、惜しい事に食い物がまずい。>
<おれは新聞を丸めて庭へ抛げつけたが、それでもまだ気に入らなかったから、わざわざ後架へ持って行って棄てて来た。>
この他にも、「赤シャツ」がいつも赤いシャツを着ている理由(赤は身体に良い)を耳にしたとき「いらぬ心配だ。それならついでに他の着る物も全部赤にしてしまえばいい」と言います。
辞表を出そうと校長に詰め寄ったときも、赴任してすぐに辞めると履歴に傷が付くという意見に対して「履歴なんか構うもんですか、履歴より義理が大切です」ときっぱり言い放っています。
これぞ江戸っ子、と思いました。
このような坊っちゃんの気性の大元は、彼が冒頭で宣言している通り、親だったのかもしれませんが、それを大きく育てたのは、清だと私は思います。
<清は時々台所で人の居ない時に「あなたは真っ直でよいご気性だ」と賞める事が時々あった。しかしおれには清の云う意味が分からなかった。>
他に誰もいないときに自分だけに「貴方はすばらしい」とささやかれ続けると、たぶん大方の人は強固な自尊心を持つと思います。
坊っちゃんは、清にほめられて育ったから、「江戸っ子」になったのです。
「ほめられると伸びるタイプ」という言葉は、もしかしたら『坊っちゃん』が起源かもしれません。
(53行,原稿用紙2枚と13行)
おわりに
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