目次
あらすじ
中学2年生・斗羽風汰は職場体験先に保育園を選ぶ。
「子どもと遊んでりゃいいってこと? ありかも」という理由で。
想像とは全然違う状況に、初日から「マジミスった」と後悔する少年。
5日間の体験を経て、彼は変われたのか?
読書感想文(2000字、原稿用紙5枚)
やらなければわからないことはたくさんあります。
あらすじだけ読んで本の感想を書こうとしても、ちゃんと読んで書いた感想にはかないません。
「暑いからお昼は簡単にそうめんにしよ」と思って初めて作ったとき、暑いときにそうめんをゆでる熱さを知ってげんなりしたことがあります。
ユーチューブを観て「自分でもやれそう」と思っても、カメラやネタ作り、マイクに衣装、動画編集などの大変さは、やってみないとわかりません。
毎日動画を投稿する彼らは、自由に遊ぶこともままならず、働いています。
笑顔の裏には努力があり、その努力を見せないようにしながら私たちを楽しませてくれているユーチューバーはほんとうにすごい。
同じように、身近に赤ちゃんや幼児がいなければ、子どもの超天変地異な狂騒の様子はわかりません。
私は家族に赤ちゃんがいるので、彼らを何十人も相手にする大変さはなんとなくわかります。
一人いるだけでもおもちゃやタオル、飲み物やご飯で部屋が乱れます。
遊び疲れて寝てくれたときの達成感は、ついついガッツポーズをとりたくなるほどです。
友だちが遊びに来たときのカオスは、経験した人でないと、想像が難しいと思います。
最初の風汰のように、いい加減な気持ちで彼らを相手にすることはできません。ほんとに。
彼らは「右に行きたい」と言ったそばから「左に行きたい」と言うし、左に向かう途中で立ち止まって道草を食べます。
言葉が通じないことに、ときにはイライラしてしまうこともありますが、『天使のにもつ』で風汰が様々な問題から目をそらさず立ち向かったように、ねばり強く、向き合わなければなりません。
様々ななにかを体験することで、私たちの世界はきっと広がります。
中学校における職場体験の効果は、そういうところにあるんじゃないかと思います。
働くことがお金を得るためのことだと考えている人にとって、「タダで働く」ということに抵抗はあるかもしれませんが、目に見えるお金ばかり追っていてもあまり人生は楽しくないと私は思います。
「お金を払ってモノを買う」「サービスをしてお金をもらう」ルールに染まりきっていると、お金の関わらない活動を無意識に避けて生きてしまうことになります。
「晴れて気分がいいから散歩をする」はシンプルに私がやりたいことですが、「晴れたときに散歩をするとホルモンが分泌されて気分がよくなり、いい気分で歩き続けることで身体が鍛えられ、病気の予防になり、医療費が浮き、お金がたまる」まで考えるような人間にはなりたくありません。
時には「なんとなく」で行動すること、「なんとなく」で「荷物を持たなければならないこと」をするのが愉快に生きるための肥料になるのでは、と思いました。
『天使のにもつ』はタイトルに「にもつ」が入っています。
とりあえず連想されるのは「荷物」です。
私は物語の最初の風汰のことを表しているのだな、と思いました。
「遊んでいればいいんだろ」という甘い考えで保育園にやってきた彼は、先生たちからすると「お荷物」以外の何物でもありません。
しかし、風汰は5日間で変わりました。
園児としっかり向き合って、園児のためにアクションを起こせるような男になりました。
彼は「荷物」ではなくなり、それと同時に「経験」という財産、すなわち職場体験から得たお宝であるところの「荷物」を持って中学校に帰りました。
また、最初は保育士からの指示や子どもたちからの遊びの誘いを「うっとうしいな」と「荷物」のように感じていた風汰ですが、やがてそれらを「荷物」として背負っても平然としていられるように成長したような気がします。
重いものを持つと、私たちの一歩はより安定したものになります。
「お金にならないから」といやがらず、積極的に荷物を引き受けてみることが、成長のための羽になるのでは。
(1585字、原稿用紙4枚と11行)
おわりに
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