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雄弁は銀、沈黙は金
ある写真を見ました。
レストランでアルバイトをしていた若者が撮ったものです。彼はキッチンにある大型の冷蔵庫の中に入り、にっこり笑っていました。また、コンビニの店員が冷蔵庫の中ではしゃいでいる写真も見たことがあります。他にも、消防士が制服を少し脱ぎながら、消火活動に使うホースとともにおどけたポーズをとっている写真なども覚えています。
これらの写真は、私はすべてインターネットを通して見ました。いずれも、アップロードされた後はよくない経過をたどったと記憶しています。レストランやコンビニは閉店されたでしょうし、消防士はなんらかの処分を受けたはずです。
彼らは写真をインターネットに載せる前に、どうして、ちょっとでも立ち止まって考えなかったのでしょうか。
インターネットは個人的な空間ではありません。見ようと思えば誰だって、どこにいたって、通信をすることさえできれば、そこに残されたものを見ることができます。仲間どうしで「こんなこと、してやったぜ」と、したり顔で見せびらかすようなことは、あまりしないほうがよいのでは、と私は思います。
『その「つぶやき」は犯罪です』を読んで私は、インターネットに何かを「つぶやく」ときには、未来をよく予想して、それがもたらすメリットとデメリットを天秤にかけるのが必要だと思いました。
インターネットにおいては、特にデメリットを過大評価して行動したほうがいいとも。自分では「犯罪ではないだろう」と思っていることでも、専門家からするとアウトなことがあることがよくわかりました。
思わぬところに落とし穴はあります。はっきりと「これはだめだ」と思うことを「つぶやかない」のはもちろんですが、できれば「グレーゾーン」のような行為も、インターネットでしないようにしなければな、と身が引き締まる思いです。
「雄弁は銀、沈黙は金」ということわざは大昔の天才が、インターネットにおけるこのような状況を予想して生み出したのかもしれません。だから私も、余計なことを書いてしまう前にそろそろ書くのをやめます。
では。
(871字)
作品情報
著者:神田芳明 前田恵美 深澤諭史 香西駿一郎
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