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絶望の中で幸福と感じるロジック
少子高齢化。財政赤字と国債残高の増加。東日本大震災と原発。著者は日本を「絶望の国」と称する。しかしその「絶望の国」に住んでいるはずの「若者たち」は「幸福である」と感じている。
著者はそれは、彼らが「これ以上良くならない」と感じているからであると分析する。
彼らの描く日本の将来は「暗い」。若者たちは未来に希望を持てない。状況は「これ以上良くならない」どころか「どんどん悪くなっていく」と考えている。
そんな環境に放り込まれると、人は「自分は幸福である」と感じるようになる。これからの人生で今がいちばんよい状態なのだ。それが「幸福」でなくて何であろうか。
また、プロ野球選手・斎藤佑樹の発言「何か持ってると言われ続けてきましたが、何を持っているのか確信しました。それは仲間です」を引用し、若者の間にただよう「仲間意識」の分析も行っている。
若者は「仲間」どうしの小規模なコミュニティを作り、そこで「村々と」生活する。しだいにそこに伏流する閉塞感のようなものに「ムラムラし」、「非日常」へ自分たちをいざなってくれるものを待望するようになる。例としてサッカーワールドカップに託けて集まり騒ぐ若者たちを挙げている。彼らはサッカーを観たいわけでも「日本の代表」を応援したいわけでもなく、ただ「非日常」を体験したいだけなのだ。それはサッカーワールドカップに限らず、ハロウィーンなどの行事でも近年見られる現象である。
余談。
『絶望の国の幸福な若者たち』文中に出てくる人物名には「マサル(23歳、大阪府)」のように、必ず年齢と出身地が併記されている。
マンガ『ONE PIECE』の引用出てくる「ルフィ(19歳、フーシャ村)」という表現に笑ってしまった。そこまで厳密じゃなくてもよいのでは、と。たぶんギャグで書いているのだろうけど。
(768字)
作品情報
著者:古市憲寿