目次
読むべきは二度以上読みたくなる本
KKc
西加奈子『サラバ!』の800字書評です。
なにかが終わるときに「お開き」と言ったり、梨のことを「有の実」と言ったり、人間はあんまりよくない言葉のことを反対に言ったりする。
「サラバ!」もそんな言葉だ。
額面通りに受け取ればそれは「別れの言葉」である。
しかし『サラバ!』の登場人物はそれを別れの言葉として使わない(使ってるけど)。そこに込められた意味は「再会」だ。
人は変わる。変わっていく。変わらざるを得ない。
だからきっと必ず別れのときは訪れる。
でも、そのときに「別れ」を嘆くか「再会」を(前もって)言祝ぐかは選択できる。
「サラバ!」はそんな言葉だ。
『サラバ!』は単行本で2冊構成である。上巻は「助走」にあたり、下巻で一気に物語はスピード感を増す。前半のじりじりとした雰囲気に対して、下巻の圧倒的な速さに驚く。
読者は作者の紡ぐ物語になんとか振り落とされないように、置いてけぼりにならないように必死で読み進める。そして大逆転のラストシーンへ。
読み終えたとき、なんだか取り残されたような気分になるが、本を閉じて気づく。
そこには「サラバ!」と書かれている。
それは、再会の言葉。
だからたぶん、「もう一度!」と読みたい気持ちになる。
二度目を読もうと思わない本は、読まなくてもよい本だ。
翻って、読むべき本は、二度以上読みたくなる本である。
(書評も、そうありたいものですけど)
(590字)
作品情報
著者:西加奈子
情報:第152回直木賞受賞
2015年本屋大賞第2位
おわりに/h2>
KKc
お読みいただきありがとうございました。
「800字書評一覧」はこちらから。
記事に対する感想・要望等ありましたら、コメント欄かTwitterまで。
KKc
お読みいただきありがとうございました。