辻村深月『名前探しの放課後』800字書評

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確信犯的フルネーム隠し

KKc
辻村深月『名前探しの放課後』の800字書評です。

 

 未来からきた依田いつか。ドラえもんではありません。
 ……あ。辻村深月ってドラえもん好きだし、もしかしてオマージュなのか?
 ドラえもんはのび太の未来を変えるためにやってきたのに対し、いつかは自殺した生徒を救うためにやってきたと語る……まぁ似てるっちゃ似てなくもない。

 

 ドラえもんは「のび太を真人間にする」(すごい言い方だ)という、なんだかぼんやりした目標(単行本で40巻以上もなんやかんややってることがその証明)を持っているのだけれど、『名前探しの放課後』は「自殺した生徒を突き止める」という、わりとはっきりした目標がある。
 はっきりした目標があるからこそ、文庫本2冊でまとまるし、さらに(脱線?して)他の辻村深月作品へのリンクも盛り込むことができた。

 

 うっかりすると「死んだのは誰か?」よりも、細かな関連を発見することに夢中になってしまって、ページをめくる手が止まらなくなる。いや、「死んだのは誰か?」を追っていてもページをめくる手は止まらないのですけど。

 

 そうそう。細かな関連といえば、登場するキャラクターがフルネームで呼ばれないのって、きっと確信犯ですね。
 その、クライマックスになって本名が明かされると「あぁ、あいつか」とため息が出る。こんなに成長して……みたいな。そういうふうに、本筋とは関連しないけれども他作品とは関連するような仕掛けをしてくれているところが、辻村深月のすばらしいところであります。私もそのサービス精神を見習いたいものです。
 特に思いつきませんが。

(646字)

 

作品情報

著者:辻村深月
情報:第29回(2008年)吉川英治文学新人賞候補作

 

おわりに/h2>

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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