虎の威を借る狐(借虎威)|解説と問題と感想

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※三省堂『故事ことわざ辞典 特装版』を参考にした

目次

【意味・教訓】

 「虎の威を借る狐」とは、力のあるものを利用していばっている人のことをいう。
 教訓としては、自分がどう見られているのかを知らないでいると、損をすることがあるということ。虎のようにだまされてしまうかもしれない。

 

【書き下し文】

KKc
書き下し文です。番号はそれぞれ対応しています。

 ①虎、百獣を求めて之を食らふ。(とら、ひゃくじゅうをもとめてこれをくらう)

 ②狐を得たり。(きつねをえたり)

 ③狐曰く、「子敢へて我を食らふこと無かれ。(きつねいわく、しあえてわれをくらうことなかれ)

 ④天帝我をして百獣に長たらしむ。(てんていわれをしてひゃくじゅうにちょうたらしむ)

 ⑤今、子、我を食らはば、是れ天帝の命に逆らふなり。(いま、し、われをくらわば、これてんていのめいにさからうなり)

 ⑥子、我を以て信ならずと為さば、吾子の為に先行せん。(し、われをもってまことならずとなさば、われしのためにせんこうせん)

 ⑦子、我が後に随ひて観よ。(し、わがあとにしたがいてみよ)

 ⑧百獣の我を見て、敢えて走らざらんや。」と。(ひゃくじゅうのわれをみて、あえてはしらざらんや、と)

 ⑨虎以て然りと為す。(とらもってしかりとなす)

 ⑩故に遂に之と行く。(ゆえについにこれとゆく)

 ⑪獣之を見て皆走る。(けものこれをみてみなはしる)

 ⑫虎、獣の己を畏れて走るを知らざるなり。(とら、けものののおのれをおそれてはしるをしらざるなり)

 ⑬以為らく、「狐を畏るるなり。」と。(おもえらく、きつねをおそるるなり、と)

 

【現代語訳】

KKc
現代語訳です。番号はそれぞれ対応しています。

 ①虎は、たくさんの獣を捕まえて食べていた。

 ②(あるとき)狐を捕らえた。

 ③狐は「あなたは私を食べようとしてはいけません。

 ④天の神さまは私を百獣の王にしました。

 ⑤今もし、あなたが私を食べるとしたら、それは天の神さまの命令にさからうことになります。

 ⑥あなたが私のことを信用できないと思うのならば、私があなたの前に立って歩きます。

 ⑦あなたは私の後ろについてきてください。

 ⑧獣たちは私を見て、どうして逃げないことがありましょうか。いや、逃げます。」と言った。

 ⑨虎はそのとおりだと思った。

 ⑩だから、狐についていった。

 ⑪獣たちはこの様子を見てみんな逃げていった。

 ⑫虎は、獣たちは自分のことをこわがって逃げたことがわからなかった。

 ⑬(なので)「狐を恐れたのだな」と思った。

 

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【問題・解説】

KKc
問題になりそうなところとその解説です。

・語句について

 Q.①の「百獣」とは?
 A.たくさんの獣のこと。

 Q.②の「子」とは?
 A.「あなた」のこと。

 Q.④の「天帝」とは?
 A.天の神さまのこと。虎よりも偉い。

 Q.⑥の「先行」とは?
 A.狐が虎の前に立って歩くということ。これによって狐が獣たちに恐れられていることを虎に見せることができると考えた。

 Q.⑨の「以為らく」とは?
 A.「~と思う」と訳す。また「以て……為す」と書き下すこともある。

・句形について

 Q.④の「●●……をして~しむ」の訳し方は?
 A.「●●は……を~させた」と訳す。使役という。試験などで問われやすい

 Q.⑤の「今~ば」の文法的な意味は?
 A.「もし~なら」という仮定をあらわす。

 Q.⑥の「……を以て~と為さば」の訳し方は?
 A.「……を~と思うのなら」と訳す。

 Q.⑧の「敢えて~や」の訳し方は?
 A.「どうして~しないことがあるか。いや、~する」と訳す。反語という。試験などで問われやすい

・指示語について

 Q.①の「之」とは?
 A.虎が捕まえたたくさんの獣のこと。

 Q.⑨の「然り」とは「そのとおり」という意味であるが、何がそのとおりなのか?
 A.狐の言うとおりに、虎が狐の後ろについて歩くこと。

 Q.⑪の「之」とは?
 A.狐と虎が一緒に歩いている様子のこと。虎のみを指しているのではないので注意する。

 Q.⑫の「己」とは?
 A.虎のことである。

・狐はどのようにして虎をだましたのか?

 狐はまず、虎よりも格上の「天の神さま」の話をした。それによって虎を自分の都合のいいように動かすことができた。そして、虎の力を狐の力だと信じこませることで、狐は虎をだますことに成功した。

【感想】

 「虎の威を借る狐」は力では完全に負けている狐が、話術で虎をやりこめてしまう話です。やりこめるどころか、その力を自分のもののように利用しているというところが、狐のすごいところだと思います。一挙両得。こうありたいものです。

 

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