目次
それが旅行というものです
<そこに何があるか前もってわかっていたら、誰もわざわざ手間暇かけて旅行になんて出ません。何度か行ったことのある場所だって、行くたびに「へえ、こんなものがあったんだ!」という驚きが必ずあります。それが旅行というものです>
村上春樹の紀行文集。表紙にもその旨が記載されています。もしもそう書いてなかったとしたら(村上春樹の新刊か?)と思ってしまうようなタイトルです。小説ではありません。
10章+あとがきという構成。
・チャールズ湖畔の小径―ボストン1
「小径」とは「こみち」「ほそいみち」のこと。ボストン・マラソンを走る著者の写真もおさめられています。
・緑の苔と温泉のあるところ―アイスランド
・おいしいものが食べたい―オレゴン州ポートランド、メイン州ポートランド
・懐かしいふたつの島で―ミコノス島、スペッツェス島
・もしタイムマシーンがあったなら―ニューヨークのジャズ・クラブ
・シベリウスとカウリスマキを訪ねて―フィンランド
村上春樹の小説『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』では、主人公がフィンランドに向かいます。
・大いなるメコン川の畔で―ルアンプラパン(ラオス)
・野球と鯨とドーナッツ―ボストン2
・白い道と赤いワイン―トスカナ(イタリア)
トスカナで村上春樹は、自身と同じ年に生まれたワインと出会います。
・漱石からくまモンまで―熊本県(日本)
まさか村上春樹がくまモンを語るとは……。
旅をするのは、その先で何が自分を待ってくれているかがわからないからです。
入念に計画を練って旅行をすることよりも、宿だけ決めてあとはなり行きで……という旅の方が、発見の喜びは大きいと思います。
だからたぶん、『ラオスにいったい何があるんですか?』が気になったら、あまり情報を集めずに読む方が、きっと深い満足感を得られると思います。
(797字)
作品情報
著者:村上春樹
※電子書籍版は写真が大幅に追加されているようです
おわりに
「800字書評一覧」はこちらから。
記事に対する感想・要望等ありましたら、コメント欄かTwitterまで。