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殺し屋の論理と不条理
スポットライトを浴びるのは主に3人。
亡くした妻の復讐を誓う鈴木。メイン・キャラクターの名前を「鈴木」とするのってすごい勇気だ。でも、「普通」のレッテルを貼るのにはうってつけだと思う。ちなみに海外の小説でいうと「アン」とか「ジョン」とか(……けっこうそういう小説ってあるような気がする)?
ナイフを使う殺し屋「蝉」。
自殺専門の殺し屋「鯨」。
スピード感のあるアクションシーン、スピード感のある小説展開。
やっぱり伊坂幸太郎は群像劇を書くのが一番だ、と思う。
キャラクターひとりひとりが丁寧に描かれており、危うい人間なのに、どこか愛おしい。嫌いになれない。
槿(アサガオ)の言葉が印象的。「未来は神様のレシピで決まる。未来はもう決まってるんです。自然に任せればいいんですよ」
人生における決定的瞬間は、往々にして後になってわかる。それゆえ後悔してしまうことも多い。あのときこうしておけばよかった、と臍を噛む。
それを予防する方法がある。
それは物事に出会ったときに「まさか、このときはあんなことになるなんて思いもよらなかった――」と自分の心の中にセルフ・ナレーションをつけることである。まるで少女マンガのように。
槿のように、後に起こることと現在がリンクしているような気持ちで生きていれば、日々を送る上でかなりのストレスは軽減できるのではないか。
そうそう。
続編として『マリアビートル』がある。『グラスホッパー』の登場人物も出ます。作者が続きを書く気持ちになったということは、それだけキャラが立っている小説である証拠でしょう。
そういえばそろそろ『グラスホッパー』の映画公開だ。個人的には殺し屋同士のアクションシーンが楽しみ。
(729字)
作品情報
著者:伊坂幸太郎
情報:2015年11月7日より映画が全国公開
続編は『マリアビートル』