目次
サザエさんと考えさせられる読書
確か日曜日だったと思うが、『サザエさん』というアニメがある。
そのアニメ中で食事シーンは、たいてい一家全員そろっている。親戚が同席していることすらある。
現在の日本の食卓ではあまり見られなくなった「絶滅危惧種」の光景である。
『家族という病』の著者は、そんな題名の本を出すことからもわかるとおり、「家族」を「病気」だと考えている。「病気」どころか「呪い」ととらえている節もある。(『サザエさん』のような)「一家団欒」に多くの日本人は憧れ、それにとらわれている、と。
内容についてここでは言及しない。
本書の優れているところは、そこに書かれた著者の考え方ではなく、そこに書かれたことを読んだ人がなにかを考えたり主張したくなったりする点だと私は思う。
そのような本はしばしば「考えさせられる本」と言われたりする。
『家族という病』を読んだ人は、ほぼ間違いなく自分の家族について「考えさせられる」。そうせざるをえない。そして、少しでも思いをめぐらせてしまった以上は、それを誰か他の人に話して聞かせてみたくなる。別に誰も聞いてくれなくとも、SNSなどに書き込みたい衝動に駆られるかもしれない。
本書はベストセラーになったらしい(具体的な数字は失念してしまったけれど)。「考えさせられる」という装置を内包していることがその一因であるように私には思える。
「ベストセラーを生み出したい」と考えている方がこの本を読むと、役に立つ知見が得られるかもしれない。(ベストセラーの秘訣を暴いてやる)と考えながら読めば「考えさせられる」ことはきっとない。
「考えさせられる」読書ではなく「考える読書」の方が何千倍、何百倍も有意義な時間だと私は思う。
あんまりまとまっていないと思うけれど、これで終わりにする。
さて、私はどうしてこんな終わり方にしたでしょうか?
(780字)
作品情報
著者:下重暁子