目次
あらすじ
サミの祖父が大事にしていた楽器「ルバーブ」がうばわれてしまった!
必要な資金は「1か月以内」に「700ドル」!?
希望と友情、創意工夫と計算で「祖父の魂」を取り戻せ!
ストロー・ミリオネア物語。
読書感想文(2000字、原稿用紙5枚)
サミとおじいさんは、パシュトゥーン人です。
出身はアフガニスタンですが、テロにあい、故郷を離れることを決めました。
テロ組織「タリバン」の残酷な自爆テロによって、家族・親戚は殺されました。
『11番目の取引』では、タリバンの残忍さや、サミ一家の不幸にそこまで文字数が割かれてはいないため、想像に頼るところが大きいのですが、無残な体験はサミの心に大きな爪痕を残していると思いました。
「わしらが失った者を他のもので補うことはできん。だが、これからもたくさんの出会いはある」
この世界にあふれる矛盾を全部まとめて解決することはほぼ不可能ですが、おじいさんの前向きな言葉に、その状況の中にあっても生きのびるための決意のようなものを感じました。
心に傷を抱えながらも、サミとおじいさんはアメリカで難民として生きることを選択します。
生きるための手段はアフガニスタンの伝統楽器「ルバーブ」です。
おじいさんは有名なルバーブの奏手だったため、路上で日銭を稼ぐことができました。
日本でも駅前で活動されている方をよく見ますが、彼らはそのお金だけで生きていけるのでしょうか。
ある日、サミが演奏していると、ルバーブは奪われてしまいます。
「難民である」という偏見を前にピュアも正義もあったもんじゃありません。
自分がルバーブを任せられていたときにそんなことになったため、サミは猛烈な罪悪感に苛まれます。
彼は必死に探し、友人の協力もあり、ネットオークションに出品されているのを発見しました。
祖父ルバーブの値段、700ドル。
魂のルバーブを取り返すためには、1か月以内にその金額を用意しなければなりません。
楽器の値段ってけっこうするのだな、と思いましたが、画像を検索して少し納得しました。とても珍しい形をしているので、コレクターにとってはたまらないんだろうな、と思います。
グーグルで調べてみると、80万円弱でした。
時給900円で一日8時間労働を31日続けても20万円強です。
12歳が80万円弱を1ヶ月で用意するのはむずかしいのでは、とドキドキしました。
「仕方ない」「どうしようもない」そう言ってあきらめることもできたと思いますが、サミはそうせず、自分の持ち物を交換し始めます。
おじいさんからもらった大事なキーホルダーを、壊れたiPodと交換しました。
それを友人に修理してもらい、使えるようになったiPodを別のものと交換していきます。
私もiPodを持っていますが、ぱっと見、ねじ穴もないので、まずどうやって分解するのかがわかりません。iPodを直せる人を尊敬します。
「わしらがそれをうけ入れれば、神はわしらのまわりにほかの者を呼びよせてくれる。わしらはけっしてひとりぼっちにはならん」
テロによって大切な人たちを失ったサミは、交換を通じて人とのつながりを増やしていきます。
誰に何を奪われても、誰に何度裏切られても、何度でも目を覚まして笑って生きていくことができる強さを感じました。
「正直にいおう。この苦しみにいつか終わりが来るものかどうか、わしにもわからんのだ。だが、ずっとこのままではないはずだ」
辛いことがいつまでも続くわけではないことを「やまない雨はない」とか「明けない夜はない」といって前向きに考える意見がありますが、おじいさんの言葉もそれに近いメッセージだと思います。
過酷な状況に置かれていると、「一寸先は闇」であるがゆえに、どうしてもネガティブな気持ちから抜け出せずに、どん底メンタルでずるずるいってしまいがちですが、たいていのことは、のちになって振り返ってみると「あのときはつらかったね」と振り返ることができると、私は自分の短い人生経験上、知っています。
『11番目の取引』を読んで、そのことを再確認できました。
(1568字、原稿用紙4枚と13行)
おわりに
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