『白いイルカの浜辺』読書感想文|弱者の殻を破る

あらすじ

 母は行方不明、父は難語症、学校になじめず、さらに借金も抱える主人公・カラは傷ついたイルカの子を見つける。
 イルカが助かれば母も戻ってくる。
 そう強く信じ、カラは行動し、変わっていく。

【読書感想文】原稿用紙5枚(2000字,100行)

KKc
「弱者の殻を破る」

 

 弱者は人の胸を打つ。

 

 『白いイルカの浜辺』に登場するイルカは傷ついていて、その命を救おうとカラは動きます。
 脳性小児マヒという障害を抱えるフィリクスという少年も出てきます。
 カラの母親は生死不明で、かつ、カラの父親も頼りがいのある人物とはいえません。
 カラ自身も、学校生活に問題があり、うまく人生を生きている感じには描かれていません。

 

 『白いイルカの浜辺』でスポットライトが当たっている人たちは、どこか「弱さ」を抱えて生きています。
 弱いものは、それだけで「かわいそう」という感想を他人に与え、そこからしばしばメリットを引き出します。

 

 配偶者が難病にかかったことを公表したとしたら、芸能人の好感度はきっと上がるでしょう。
 仕事仲間が犯罪に手を染め逮捕された後で「俺は信じてるから」と発言したスポーツ選手には直後、インタビューが殺到するでしょう。

 

 みんな、そういう「弱者とそれにかかわる人びと」の話が大好きです。だから「優しくされるポジション」に身を置きたいときは、「自分は弱いです」とか「自分は弱い人を気にかけています」というアピールをするのが一番てっとりばやい方法だと私は思います。

 

 でも、「私はこんなに弱いんだから」とか「私は弱い人の人生まで背負って生きているのだ」とか、そういうことを声高に主張しながら生きることは、そうでない場合に比べて楽かもしれませんが、私はあまり感心しません。

 

 「弱いこと」でアドバンテージを得ているということは、当たり前ですが、「強くはなれない」ということです。
 「弱者であること」に価値を見出している人は、ほとんど上昇するための努力を行いません。むしろ、「現状維持の努力」あるいは「下降の努力」をしています。それはそれで大変だと思いますけれど。

 

 イルカは眠らない、という話を聞いたことがあります。
 正確に言うと、脳みそを完全に休ませないみたいで、右脳と左脳を交互に休ませることで、完全に眠っているような時間を作らない……というような話でした。

 

 私も勉強などで「眠っている暇なんてない!」という状況になることがときどきありますが、あきらめて寝てしまうか、あるいはすごくがんばって朝まで(というか次の夜まで)起きているか、そんな感じになってしまうときがあります。

 

 イルカはきっと、外敵に食べられてしまわないように、「弱者」でいないために、そのような睡眠メカニズムを身につけたのだと予想します。

 

 そんなイルカの生態は簡単に真似できるものではありませんが、人間の生きる姿勢はそれよりは参考にしやすいです。『白いイルカの浜辺』に登場するフィリクスはこんなセリフを残しています。

 

 <海に出ればおれは自由なんだ
 障害児という「弱者」の地位に甘えず、自由を求めて行動する彼の姿に、私は心を打たれました。私はこのように「自由で強くありたい」という人間が好きです。

 

 マンガ『進撃の巨人』に登場するアルミンというキャラクターも私は好きです。
 壁に囲まれた町で暮らしていた彼は、壁の向こうにある世界を見てみたいと渇望します。そしてその願いを実現すべく勉強し、身体を鍛え、努力を重ねて壁の向こうに一歩を踏み出しました。佳話です。

 

 『白いイルカの浜辺』は、弱者の物語ですが、フィリクスは自由を求めているし、カラはイルカを助けようとするし、さらに目を背けていた母親の死を受け入れようとするしで、決して登場人物たちが「弱者の地位」に安住しようとしていません。そういうところが私は好きです。
 私もカラのように、自分の殻を破りながら生きたい。

 

 書いてからダジャレになっていることに気がつきました。

(89行,原稿用紙4枚と9行)

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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