東野圭吾『変身』―「脳が変わった」といわれました。

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※引用はすべて講談社文庫による

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東野圭吾『変身』あらすじ

 平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。
 そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行なわれた。
 それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしようもない。
 自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植された脳の持ち主の正体を突き止める。
 (裏表紙)

 部屋探しのため不動産屋を訪れた純一は、強盗に頭をピストルで撃たれる。

 「銃……」僕は目を開けた。
 「ピス……ト……ル」
 「そう、思いだしたようだね。君はピストルで撃たれたのだ」
 (8頁)

 そうだあの劣悪なアパートこそ、僕の身に起こった悲劇の元凶だ。
 僕はもう少しましな部屋を探しに近所の不動産屋へ行き、そこで頭を銃で撃たれたのだった。
 (16頁)

 運びこまれた病院で、堂元博士は彼に脳移植手術を施した。
 手術は成功し、快復したかに見えた。
 しかし純一は異変を感じる。

 洗面台の鏡に何気なく目をやった。そしてどきりとした。
 そこに見たことのない人間が映っていたからだ。
 僕は思わず後ずさりした。
 (43頁)

 周りの人々も彼の変化を感じとる。

 「それにしても、ジュン、おまえ本当にジュンか?」
 (73頁)

 これは同僚の葛西の言葉。

 「以前と少しタッチが変わったかなと思って。
 最初の方はそうでもないんだけど、後になるとはっきりしてくるような気がする」
 (86頁)

 これは恋人である恵の言葉。純一の描いたものに対するコメント。

 「成瀬さん、本当に元気になりましたね。何だか前よりも男らしい感じだ」
 (96頁)

 これは隣人の臼井の言葉。

 純一は自分の変化を否定しようとするが、そのたびに軽い頭痛に襲われる。
 恵とのデートも楽しめず、隣室の臼井に殺意を抱く。
 「変身」を認めざるを得なくなっていく……

 今の僕は、一体誰なのだ?
 (129頁)

KKc
以下、ネタバレを含みます。

東野圭吾『変身』ネタバレと感想

 「手術後の自分」に違和感を感じた純一は、堂元博士の元を訪れる。
 「移植された脳が自分の人格に影響を与えているのではないか」という疑問を博士は否定する。

 何の心配もいらない。君は以前の君のままだ
 (137頁)

 納得がいかない純一は「解析結果を見せてほしい」と頼むが、「それは後日」とはぐらかされる。

 その後純一は「脳の提供者(ドナー)」と教えられた「関谷時雄」の遺族を訪ねる。
 そこで彼は「何かが違う」と直感する。

 科学的根拠は何もないが、脳の一部に共通の因子を持つ以上、お互いに何らかの直感が働くような気がしていたのだ。
 しかし白髪頭の痩せた男をいくら眺めていても、インスピレーションは生じなかった。
 (151頁)

 そして純一は「本当に関根時雄がドナーなのか」という質問を博士の助手・橘に投げかける。
 橘は「馬鹿げてるわ」と一蹴するが、純一はその考えを捨てなかった。

 ふとしたきっかけから純一は「俺に移植された脳は京極瞬介ではないか」と思い始める。
 京極瞬介とは純一を撃った強盗で、事件の後に自殺していた。
 京極と自分の変化に共通点があることからそう考えたのだ。

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 純一は京極の妹に会いに行く。
 彼女との会話で、自分の想像が正しいことを確かめる。

 この女性と自分とは繋がれている。
 見えない何かで繋がれている。
 そう確信した。
 彼女が全身から発している信号のすべてが、俺の身体に浸透していくような一体感があるのだ。
 (236頁)

 それは、関谷時雄の父親と会った時に決して抱かなかった感情だった。
 純一が問い詰めると、博士は隠していた事実を認めた。

 「そうだ。ドナーは京極瞬介だよ」
 (258頁)

 博士を殴り飛び出した純一。
 彼は自分が京極瞬介に「支配」されつつあることを自覚していた。

 橘助手が純一の「味方だ」といって接近してくる。
 純一は彼女を信用する。
 しかし橘は彼を裏切り誰かと連絡を取っていた。
 純一は橘を殺す。

 俺は女の首を締めた。
 指を喉仏に食いこませると、柔らかさの中に、しっかりとした手応えがある。
 (324頁)

 死体を隠し、姿を消そうと考える純一の前に恵が現れる。
 恵は「一緒に逃げよう」と言った。
 提案を飲み二人は身を隠すが、純一だけになったところを正体不明の男たちに連れ去られる。
 純一は殺されそうになるも逃げ出し、恵の元へ戻る。
 そして恵を殺そうとする。
 男たちによって、恵が裏切ったと教えられたからだ。

 「なぜ……居場所がわかった」
 「そのことか」と眼鏡男は口の端を上げた。
 「女だよ。女が教えてくれたんだ」
 「おんな?」
 「あんたの仲間さ。だけどよ、あの女はあんたを裏切ってるぜ」
 (366頁)

 純一はマンションまでたどり着き、恵の首を締める。
 恵は大した抵抗もせずに目を閉じた。

 その時、頭の中に嵐が来た。
 (375頁)

 純一の頭の中から、急激に殺意が消えていった。
 意識下に沈んでいた「成瀬純一」の人格が「京極瞬介」の人格に勝ったのだ。

 俺は手を放し、彼女に背を向けた。
 「どこへ?」と彼女は訊いた。
 「取り戻しに行くんだ」と俺はいった。
 「自分自身を」
 (377頁)

 純一は堂元博士の研究室へ向かって走った。

 純一は博士に問う。

 「脳のスペアは、もうないでしょうね」
 「スペア?」
 「移植可能な脳ですよ。十万分の一の確率で、俺の脳に適合した脳」
 「ああ」と私は頷いた。
 「残念ながら、ない」
 (380頁)

 それを聞いて純一は部屋を出ていき、自分の頭を拳銃で撃った。
 彼は「無意識の世界で生きること」を選択したのだった。

 『変身』は頭を撃たれて始まり、頭を撃って終わった。
 「移植手術がもたらすものとは?」「人の死とは?」など、数々の問いが残る小説だった。

東野圭吾『変身』名言

 「まるで芸能人みたいだな」
 「あなたは宇宙からの生還者なのよ」
 「うまいことをいうなあ」
 (92頁)

 急がなければ、時間がない。
 でも何を急げばいいのかしら?
 (149頁)

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東野圭吾作品を読むときは、死体が出てくるまであんまりテンションが上がりません。

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