東野圭吾『探偵倶楽部』感想|「重り」を外して書いた小説

※引用はすべて祥伝社文庫による

『探偵倶楽部』あらすじ

<探偵倶楽部とは、政財界のVIPのみを会員とする調査機関。美貌の男女が秘密厳守で捜査に当たる>

大手不動産会社社長・山上が自宅風呂場で感電死した。

電気コードを用いた家政婦の計画的犯行と処理されるが、山上の妻・道代は夫の入浴の手順がいつもと違っていたことに疑問を感じ、倶楽部に調査を命じた……。

五つの難事件の真相を、探偵倶楽部が鮮やかに暴く!

(裏表紙)

 

 

 東野圭吾『探偵倶楽部』は5つの短編からなる。

偽装の夜 自殺死体を偽装、生命保険が適用されるまで生きているように見せかける
罠の中 風呂で心臓麻痺を起こした老人の死に疑問を感じ、探偵倶楽部に依頼する
依頼人の娘 探偵倶楽部が、依頼人とその娘から同時に依頼を受ける
探偵の使い方 探偵倶楽部の行動すらも犯罪計画の一部として利用する
薔薇とナイフ 妊娠が発覚した女性をめぐる殺人事件
KKc
相互に関連がないので、どれから読んでも大丈夫。

 

 表面上事件の決着がついたと思いきや……

 至高のどんでん返しが用意されていることを保障する。

 

KKc
※以下の文章はネタバレを含むので、読み終わってから目を通すことをおすすめします。

 

『探偵倶楽部』ネタバレと感想

 『探偵倶楽部』では探偵はどちらかというと裏方だ。

 男女一人ずつ二人の探偵が登場するが、彼らについて語られることはほとんどない。 発する台詞すらもビジネス上の必要を超えない。

 『探偵倶楽部』は探偵の存在を限りなく薄くした小説であるといえる。

 

 では、探偵をあえて詳しく描かないことでどんな効果があったのか?

 ストーリーやトリックをシンプルに楽しめる小説になった。

 最後のどんでん返しが際立つ結果となった。

 

 

 そういう意味で『探偵倶楽部』はミステリーの構成に重きをおいた作品であるといえる。

 正しくは「重きを置いた」というより「重りを外した」と言った方が正しい。

 キャラクターについて語らないため、単純にミステリーを楽しむのにうってつけな話になっている。

 そのため、あっさりとしたライトな読書感を味わうことのできる短編集に仕上がっている。

 

『探偵倶楽部』名言

「未必の故意」

(125頁)

 

「いっそ死んでくれればいいのに」

過激な台詞だったが、彼女は本気らしかった。

「死んでほしいのは私だって一緒よ」

(264頁)

 

「電話をかけて、あなたご自身で確かめられてはいかがですか?」

(329頁)

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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