秋は、ずるい悪魔だ|太宰治『ア、秋』感想

あらすじ

 詩人がどうやって詩的な文章を作るか、その作り方が書かれています。
 「秋について」というテーマで詩を作るとしたら?
 主人公はノートのページをめくり、思いをめぐらせます。

心に残った一文

 <芸術家は、いつも弱者の友であったはずなのに。>

「路問エバ、オンナ唖ナリ、枯野原」について

 太宰治『ア、秋』には、「路問エバ、オンナ唖ナリ、枯野原」という意味深な俳句が出てきます。
 「枯野原」とは、野原が枯れている様子なので、舞台は冬なのでしょう。女性に道を訊ねている様子が想像されます。
 仮に、女の人に道を訊いたあとで、そこが枯野原であることに気付くという順番であれば、そんなところに人がいるのは不自然だという考えに思い当ります。
 私が思うに、彼女は幽霊の一種ではないでしょうか。
 枯野原というものさみしい風景と、「唖」という人間の動作を表すには不自然な単語が使われていることが、そのことを裏書しているような気がします。

感想

 私は『ア、秋』は「思考の暴露」の文章だと思いました。
 「秋について」というお題から始まり、「とんぼ」、「焦土」、「コスモス」、「ずるい悪魔」、「枯野原」、「庭をばさばさ這い回っている蝶」、「捨てられた海」、「緒方さんの子ども」、「乾燥肌」、「飛行機」、そして最後に(収拾がつかなくなったのか)「ごたごたいっぱい書いてある」という結びです。
 作中に「精神だけがふらふら飛んで」とあるように、作者・太宰治が「秋について」という文字をみたときからどのように考えたのか、その過程を表に出した文章になっているのだと思いました。
 『ア、秋』というタイトルはすばらしいと思いますが、蛇足ながら、あえてサブタイトルをつけるなら「詩的文章のつくりかた」なのかもしれません。
 帯の文章は「本職の詩人による季節別・詩の作り方【決定版】!!」でしょうか。
 あんまり売れないような気がします。

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