【800字書評】古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』|絶望の中で幸福と感じるロジック

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絶望の中で幸福と感じるロジック

KKc
古市憲寿『絶望の国の幸福な若者たち』の800字書評です。

 少子高齢化。財政赤字と国債残高の増加。東日本大震災と原発。著者は日本を「絶望の国」と称する。しかしその「絶望の国」に住んでいるはずの「若者たち」は「幸福である」と感じている。

 著者はそれは、彼らが「これ以上良くならない」と感じているからであると分析する。
 彼らの描く日本の将来は「暗い」。若者たちは未来に希望を持てない。状況は「これ以上良くならない」どころか「どんどん悪くなっていく」と考えている。

 そんな環境に放り込まれると、人は「自分は幸福である」と感じるようになる。これからの人生で今がいちばんよい状態なのだ。それが「幸福」でなくて何であろうか。

 また、プロ野球選手・斎藤佑樹の発言「何か持ってると言われ続けてきましたが、何を持っているのか確信しました。それは仲間です」を引用し、若者の間にただよう「仲間意識」の分析も行っている。

 若者は「仲間」どうしの小規模なコミュニティを作り、そこで「村々と」生活する。しだいにそこに伏流する閉塞感のようなものに「ムラムラし」、「非日常」へ自分たちをいざなってくれるものを待望するようになる。例としてサッカーワールドカップに託けて集まり騒ぐ若者たちを挙げている。彼らはサッカーを観たいわけでも「日本の代表」を応援したいわけでもなく、ただ「非日常」を体験したいだけなのだ。それはサッカーワールドカップに限らず、ハロウィーンなどの行事でも近年見られる現象である。

 余談。
 『絶望の国の幸福な若者たち』文中に出てくる人物名には「マサル(23歳、大阪府)」のように、必ず年齢と出身地が併記されている。
 マンガ『ONE PIECE』の引用出てくる「ルフィ(19歳、フーシャ村)」という表現に笑ってしまった。そこまで厳密じゃなくてもよいのでは、と。たぶんギャグで書いているのだろうけど。

(768字)

作品情報

著者:古市憲寿

おわりに/h2>

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コメント

  1. けy より:

    今がまだマシ、だから幸福だ…ですか。個人的にはあまりネガティヴな幸福感は好きではありませんね。
    私の思う幸福は、「人が人として自然に生きていれば、その中で自然となっていくもの」です。
    色々な本やゲームから得た考え方が組み合わさっただけですけど、なかなか形にするのが難しいです。
    「生の肯定」、「自然となるもので、ふとした瞬間に感じる」までは辿り着きましたが、まだ納得できていないです。

    • KKc より:

      そう、現代日本にはネガティブな幸福感が蔓延しているようです。
      たぶんおっしゃるように、幸福は個人がああでもないこうでもないと悩みながらなんとか形作っていくものであって、「マシだから」のように短絡的に決めるようなものではないと思うんですよね。