『サマーウォーズ』読書感想文と名言|自分にできること

※引用はすべて岩井恭平(原作:細田守)『サマーウォーズ』角川文庫による

あらすじ

 

 夏希先輩の「彼氏役」として陣内家にお泊り旅行することになった小磯健二。

 滞在中、電子空間”OZ”がハッキングされ、健二はその事件の「指名手配犯」になる。
 それを知った健二は逆にOZをハッキングしラブマシーン(犯人)を追いつめるが、逃げられる。
 ラブマシーンは日本中のシステムを掌握し、混乱が広がる。

 陣内家は大おばあちゃん(陣内栄)の死をきっかけに、一致団結してラブマシーンを倒そうとする。
 「キング・カズマ」の協力もあり、あと一歩のところまで追い詰めるが、倒すことはできない。

 そうこうしているうちにラブマシーンは人工衛星を核施設に墜落させようとしていた。
 夏希は花札でラブマシーンに「世界」を掛け金に勝負を挑む。

 

登場人物紹介・用語について

小磯健二(こいそけんじ)

 『サマーウォーズ』の主人公。数学オリンピックに挑戦するほど数学が得意。
 篠原夏希のことが好き。

 

篠原夏希(しのはらなつき)

 『サマーウォーズ』のヒロイン。夏休みに小磯健二を連れて長野県上田市にある母親の実家・陣内家を訪れる。美人。

 

キング・カズマ

 OZでの格闘ゲームにおける最強プレイヤー。
 本名は池沢佳主馬(いけざわかずま)。
 健二と協力してラブマシーンに挑む。

 

大おばあちゃん

 陣内栄(じんないさかえ)。90歳になる「日本一の老女」。
 陣内家の誰もが彼女の決定には従う。

 

陣内侘助(じんないわびすけ)

 10年ぶりに陣内家に帰ってきた男。夏希には好かれている。
 大おばあちゃんの山を売り、その金を持ってアメリカに逃げた過去を持つ。
 ラブマシーンの開発者。

 

陣内理一(じんないりいち)

 自衛隊員。「ちょっと言えないトコ」所属。ラブマシーンを倒そうと健二が提案したとき、「人を守ってこそ、己を守ることもできる」と言って、いちばん始めに味方になってくれた。
 ラストで健二をサイバーテロ対策の仕事の話を持ちかける。

 

ラブマシーン

 人工知能(AI)。OZをハッキングした犯人。
 倒したアバターを吸収し、その人に成りすまして色々なシステムにアクセスする。
 日本中の電話・通信回線を混乱させる。インフラシステムをいじくり回す。
 目的は自分の進化。進化のために”混乱”を起こし、それにより呼び寄せた者の”挑戦”を受け、それに勝利し”吸収”する。

 

OZ

 仮想空間。インターネットのようなもの。その世界の中ではアバターを使って行動する。

 

アバター

 仮想世界OZの中を動くためのキャラクターのこと。

 

こいこい

 花札のルールのひとつ。役ができてもあがらずに、さらなる高得点の役を期待してゲームを続けること。そのときに宣言する言葉。
 篠原夏希はこれを駆使してラブマシーンと渡り合った。

 

家系図

 岩井恭平(原作:細田守)『サマーウォーズ』角川文庫の4,5頁に掲載。複雑ではないが人数が多い。

 

家紋

 陣内家の家紋は「黒い縁取りの円の中に、雁(かり)の紋所」(160頁)。

 

長野県上田市

 篠原夏希の実家・陣内家があるところ。陣内家は武田軍の元家臣という話。

 

『サマーウォーズ』その後

 

 人工衛星”あらわし”は陣内家の屋敷の近くに墜落したが、一人の死者も出なかった。
 健二はラブマシーンについて説明するために警察に出頭した。

 

名言

 

「……イカばっか」
(68頁)

 

『ボク……この夏を一生、忘れないよ……』
(82頁)

 

「ダメだよ。そんな頼み方じゃ、一般社会じゃ、そんなの通じないよ」
(101頁)
なお映画では「言い方がダメ。もっと取引先に言うみたいに言って」とカズマが言います。

 

「すげー」「リアル逮捕だ!」
(136頁)

 

「ボクも、自分にできることをやらなきゃ……」
(155頁)

 

「アンタなら、できる!」
(157頁)

 

それ、なに? モー娘?
(169頁)

 

「侘助。今、ここで死ね」
(174頁)

 

家族を守るためなら、いくらでも頑張れる。
(213頁)

 

難解な問題を前にした解答者が、この世で最も欲しいものとは何だろうか?
(254頁)

 

「バカな一族!」
「そう。残念ながら、わたしたちはその子孫なのよね」
(268頁)

 

今はそれどころではない。それどころではないのだが、泣きそうだ。
(304頁)

 

「……よろしくお願いしまぁぁぁぁすっ!」
(307頁)

 

読書感想文(原稿用紙3枚,60行,1200字以内)

KKc
「自分にできること」

 

 私が『サマーウォーズ』を読んで心に残ったセリフはこれです。

 

 「ボクも、自分にできることをやらなきゃ……」(155頁)

 

 この場面の直前で小磯健二は、自分のせいで日本中が大混乱になってしまったと落ち込んでいます。

 

 「ボクが……暗号を解いたせいで、こんなことに……」(152頁)

 

 そうとは知らずに軽い気持ちでメールに書いてあった暗号を解いてしまった健二は、結果的にラブマシーンのOZハッキングに手を貸してしまいました。それに対して彼は罪悪感を感じ、どうしたらいいのかわからなくなっている状態になっています。

 

 そんな中、大おばあちゃん(陣内栄)は「こういう時は、一人一人ができることをすればいいのさ」と言って昔の知り合いに電話をかけはじめます。全国に散らばった彼らをはげましたのです。

 

 大おばあちゃんにとってこのときに「できること」は電話をかけることでした。自分の「できること」を正しく理解し、それをすぐに実行に移せることはすごいことだと私は思いました。そしてその様子をじっと見ていた健二がぽつりと言ったのが、冒頭に引用したセリフです。

 

 健二に「できること」。それは、ラブマシーンの手に落ちたOZを逆にハッキングし、ラブマシーンからOZを取り戻すことでした。

 

 篠原夏希はそれを見て<大おばあちゃんに、健二くんを励ましてもらおう――。>といったん部屋を出ますが、思い直して「がんばれ、健二くん!」と声をかけます。夏希も自分の「できること」をちゃんと見つけて、それを行動に移しています。わずかの間に彼女はすごく成長しています。「大おばあちゃんを頼る自分」から「やるべきことがわかり、それをする自分」に変わっています。私はすごい、と思いました。

 

 さて、この場面で他に私が注目したことは、健二も夏希も大おばあちゃんの「できる!」の声を聴いたことをきっかけにして何かをしようと決心したことです(直接言われたわけではありませんが)。

 

 たぶん何かをするのに必要なのは、ほとんどが誰かの「できる!」という言葉なのかもしれません。

 

 私たちが行動を起こすことをためらっているとき、あるいはどうしたらいいかまったく考えが浮かばないときでさえ、そこに必要なのは「できる!」のエールだけなのかもしれないと私は思いました。

 

 だから、私も大おばあちゃんの電話を横で聴いて「できる!」という気持ちになった健二と夏希のように、「自分のできること」を探して、行動していこうと思いました。それが『サマーウォーズ』に限らず、読書感想文を私が書くようになった理由の一つです。

(59行,原稿用紙2枚と19行)

 

おわりに

KKc
お読みいただきありがとうございました。

 

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